2020 Fiscal Year Research-status Report
翻訳開始因子 Int6/eIF3e のリン酸化修飾を介した癌悪性化機構の解明
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20K16373
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
齊藤 紗希 (後藤紗希) 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 研究員 (60756609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子発現制御 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌関連因子として知られる 翻訳開始因子 Int6/eukaryotic translation initiation factor 3 subunit E (Int6/eIF3e; 以下 Int6) は、種々の癌に関与することが示唆されている。所属研究室ではこれまでに、Int6 が低酸素応答因子 hypoxia-inducible factor 2 α (HIF2α) の発現を負に制御する分子機構を同定し、Int6 を介した HIF2α による血管新生制御を明らかにした。研究代表者は、予備実験においてリン酸化型の Int6 を新たに見出した。本研究は、Int6 のリン酸化に焦点を当てて、その機能的役割を HIF2α 制御と関連させて明確化し、Int6 を介した発癌ならびに癌の悪性化機序を解明することを目的としている。 はじめに、3 種類の Int6 ノックダウン癌細胞株 (ヒト肺胞基底上皮腺癌由来 A549 細胞、ヒト肝癌由来 HepG2細胞、ヒト乳腺癌由来 MCF7 細胞) を樹立した。続いて、タンパク質レベルで Int6 の発現減少と HIF2α の発現増加を Western blot 法により認めた A549 細胞および HepG2 細胞を今後の実験に使用することを決定した。さらに、それぞれの細胞において上皮間葉転換様の形態変化 (顕微鏡観察)、細胞増殖遅延 (cell viability assay)、および上皮間葉転換因子の発現変動 (qRT-PCR法による解析) が認められた。さらに、Int6 および HIF2α の siRNA ノックダウン実験により、細胞接着因子 E-cadherin の発現減少の回復が示された。これらの結果から Int6/HIF2α 経路が上皮間葉転換に関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
産前産後の休暇および育児休業 (2020年6月4日~2020年 11月30日) の取得に伴い、研究を一時中断していたため、進捗状況は遅れている。当初の研究計画に示したことのうち、Int6 と HIF2α が上皮間葉転換を協調的に制御することを明らかにしたことから、次年度の研究につなげることは十分可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020 年度に明らかにした Int6 および HIF2α を介した E-cadherin 遺伝子の発現制御メカニズムについて調べるために、Int6 ノックダウン細胞を用いて E-cadherin 遺伝子上流の HIF2α 制御領域をルシフェラーゼレポーターアッセイおよびクロマチン免疫沈降法で解析する。また、2020 年度に遂行することを予定していた Int6 特異的抗体を用いた免疫沈降によるリン酸化型 Int6 のプロテオーム解析 (研究所内のLC-MS/MS 解析室に依頼) を行い、 Int6 のリン酸化部位を同定する。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇および育児休業 (2020年6月4日~2020年 11月30日) の取得に伴い、研究を一時中断していたため、次年度使用額が生じた。Int6 のリン酸化部位を同定後、特異的リン酸化検出用抗体の作製費用として使用する予定である。
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