2021 Fiscal Year Research-status Report
進行胃癌のDIC併発に関連する遺伝子発現異常の網羅的探索研究
Project/Area Number |
20K16374
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 康太 東北大学, 大学病院, 助教 (50781291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃癌 / 播種性血管内凝固症候群 / 遺伝子発現異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の実績報告書に記載の通り、網羅的遺伝子発現解析の対象症例として、東北大学病院腫瘍内科及び大崎市民病院腫瘍内科において胃癌の治療経過中にDICを併発し、かつDICの原因疾患が感染症ではなく腫瘍であると考えられた症例15例および治療経過中にDICを併発しなかった症例15例からなる合計30例を選定し、臨床データおよび腫瘍組織を収集した。 バイオアナライザを用いて収集された検体から抽出されたRNAのQCを行い、マイクロアレイの適否を判断した結果、DIC併発群で13例、DIC併発無し群で12例が適合基準を満たした。 上記25例について、マイクロアレイ(Whole Human Genome Oligo Microarray kit: Agilent Technologies社)を用いて網羅的遺伝子発現データを取得した。 はじめにDICを併発した群13例とDICを併発しなかった群12例との間で有意に発現状態が異なる遺伝子群を探索した。発現データが取得可能であったプローブは合計41,093個であり、シグナル値が低いプローブは解析対象から除外した結果、29,423個のプローブが解析対象となった。これらのプローブについて2群間の有意差の検定(Mann-Whitney unpaired)を行い、多重性の検定(Benjamini-Hochberg法)および有意基準(補正p値 <0.05)でフィルタリングを行った結果、2群間で有意差のある遺伝子は抽出されなかった。 続いて網羅的遺伝子発現データを取得した25例全体で教師なしクラスタリング解析を行った結果、DIC併発ありの症例は、大きく分けて2群に分かれることが明らかとなり、1群は遺伝子発現の変動が非常に大きい特徴的な発現パターンを呈しており(DIC_1)、もう1群はDIC併発なしの症例に類似した発現パターンを示した(DIC_2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績概要に記載の通り、現在は網羅的遺伝子発現データに基づく解析結果から、DICを併発した胃癌の症例はさらに2つのサブグループに分けられることが明らかとなったが、これらのサブグループ間で有意に発現状態の異なる遺伝子群、すなわち発現異常が胃癌におけるDICの併発に関わる候補遺伝子群はまだ抽出できておらず、検証も行えていない。 遅延が生じた理由としては、COVID-19流行の影響により研究室スタッフの出勤制限が生じたことや試薬の納品時期の遅延、研究協力施設への立ち入りの制限による検体および臨床データの収集遅延が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までに実施した研究結果から、腫瘍の進行によりDICを併発した症例は、遺伝子発現プロファイルが異なる2群に分かれることが明らかとなった。1群は遺伝子発現の変動が非常に大きい特徴的な発現パターンを呈しており(DIC_1)、もう1群はDIC併発なしの症例に類似した発現パターンを示した(DIC_2)。はじめに行った解析のようにDIC併発ありの症例をひとくくりにして解析すると、発現パターンの異なる2群が混在するため、DIC併発症例ありの群を特徴づける遺伝子が抽出できなかった可能性が考えられた。 上記見解に基づき、今年度はDIC併発あり群のなかで形成された2つのサブグループ間およびそれぞれのサブグループとDIC併発無しの群との間で有意に発現状態が異なる遺伝子群(発現異常が胃癌におけるDIC併発に関わる候補遺伝子群)を同定する。さらに、独立したコホートを用いてこれらの候補遺伝子群についての検証を行うことで、胃癌にDICが併発する分子生物学的機序を探索する予定である。 現在は研究体制がCOVID-19流行以前の状態に戻りつつあり、最終年度である2022年度の間に上記解析を完了する見込みである。
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Causes of Carryover |
COVID-19流行による影響で別途記載の通り研究進捗に遅延が生じたため、解析に使用する物品費用および論文作成・投稿を含む研究成果発表に係る費用の繰り越しが生じた。
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