2022 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌に対するがんワクチン開発に向けた、がん抗原に関する基盤データの取得
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20K16380
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小室 裕康 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (40839122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん・精巣抗原 / エキソームシーケンス / RNAシーケンス / TIL / RT-PCR法 / Single Cell解析 / 発現差解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回我々は肺癌検体3例から新鮮分離がん細胞を採取し、そこからCD8+T細胞を分離しSingle cell解析を用いてT細胞のRNA発現とTCR遺伝子解析を行なった。一方で同3例の腫瘍細胞からDNA・RNAを抽出し、AIを用いてネオ抗原を予測し、またがん精巣抗原であるKK-LC-1の発現を調査した。 合計6,998個のCD8+T細胞を解析し、遺伝子発現プロファイルにより10のクラスターに分類した。ENTPD1(CD39),TOX,PDCD1(PD1),HAVCR2(TIM3)といった疲弊化マーカーを発現したT細胞集団が確認され、Texクラスターと名付けた。各クラスターにドミナントなTCR遺伝子を人工合成し、Jurkat細胞に導入して予測抗原ペプチドに対する反応性を検討した。1例では各クラスターでドミナントなTCRについて予測抗原との反応性を検討し、Texクラスターにドミナントに存在する19種類のTCRのうち4種類 (21%)で抗原ペプチドとの反応を認めた。一方、その他のクラスターにドミナントな合計52種類のTCRからは反応を認めなかった。残り2例ではTexクラスターに着目し、それぞれ発現頻度上位15番目までのTCR(30種類のTCRクロノタイプ)について検証を行い、5種類(16.7%)で抗原ペプチドに特異的な反応を示した。総じてTexクラスターにはネオ抗原を認識する4種類のTCRと、KK-LC-1を認識する5種類のTCRが存在し、Texクラスターは腫瘍抗原を認識する腫瘍特異的なT細胞集団の候補であると考えられた。また予測抗原で刺激した際のシグナル強度は、KK-LC-1よりもネオ抗原で高いことが示された。 腫瘍抗原特異的T細胞(n=140)を再クラスタリングし発現差解析を行なったところ、同じクラスター内でも分化段階や機能状態が異なるT細胞クロノタイプが存在することがわかった。
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