2020 Fiscal Year Research-status Report
ミスマッチ修復欠損神経膠腫細胞に対するTMZ抵抗性を克服する新治療の開発
Project/Area Number |
20K16390
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
樋口 芙未 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20537104)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / TMZ / ミスマッチ修復欠損 / PARP阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫においては、再発腫瘍の20-30%にmismatch repair (MMR)遺伝子の変異が認められ、この変異がアルキル化剤Temozolomide(TMZ)に対する抵抗性の要因となる。標準治療薬TMZに対する抵抗性を克服する再発腫瘍をターゲットした、あらたな治療標的、治療戦略を発見、開発することを目的として本研究を計画した。 PARP阻害剤はDNA損傷反応やDNA修復機構に重要な役割を果たすPARPの機能抑制により、TMZを含めた化学療法剤の効果促進作用が報告されている。PARP阻害剤に注目し、PARP阻害剤とTMZの併用が、悪性神経膠腫のTMZの感受性を回復できるかを研究した。複数の神経膠腫細胞株において、MMR遺伝子であるMSH6の発現低下により、TMZに対する抵抗性が獲得されることが確認された。これらのMMR欠損TMZ抵抗性神経膠腫細胞株に対して、TMZに加えて、PARP阻害剤を併用したところ、細胞増殖抑制効果が得られ、TMZに対する感受性が回復した。次に、このPARP阻害剤の効果について、そのメカニズムを解明するため、PARPたんぱく質が重要な役割を果たすDNA修復機構であるBase Excision Repair(BER) pathwayに注目した。このPARP阻害剤の効果はBERシグナルの阻害によってもたらされるという仮説をたて、他のさまざまな方法でBER シグナルの阻害を行ったが、PARP阻害剤と同様の効果は得られなかった。MMR欠損TMZ抵抗性神経膠腫細胞における、PARP阻害剤併用によるTMZ感受性の回復のメカニズムはBER阻害によるものではない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のMMR欠損TMZ神経膠腫細胞株に対して、PARP阻害剤併用により、TMZに対する感受性が回復する(細胞増殖抑制効果)結果が得られ、PARP阻害剤の効果の普遍性が確認できた。次の課題として、この効果の詳細を明らかにし、感受性回復のメカニズムの解明を目指した実験を進めている。その一部として、BER pathwayに注目し実験を行ったが、PARP阻害剤の効果のメカニズムの解明にいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度後半にひきつづき、MMR欠損TMZ抵抗性神経膠腫細胞株を用いて、PARP阻害剤併用の効果の詳細をあきらかにするため、細胞周期、DNA損傷反応の詳細について実験を行う。またメカニズムの解明のため、BER以外のDNA損傷反応や、細胞周期停止に関連するシグナル伝達との関連性についてPCR arrayを用いて解明していく。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画どおりに研究を遂行したが、学会参加旅費として計上していた使用額についてほとんどの学会がWEB参加となったため使用しなかった。これらについては、翌年度以降の基礎実験用物品費、旅費として使用していく予定である。
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