2022 Fiscal Year Research-status Report
ミスマッチ修復欠損神経膠腫細胞に対するTMZ抵抗性を克服する新治療の開発
Project/Area Number |
20K16390
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
樋口 芙未 帝京大学, 医学部, 助教 (20537104)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / TMZ / ミスマッチ修復欠損 / PARP阻害薬 / 薬剤抵抗性 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫は再発時に20-30%の症例にmismatch repair (MMR)遺伝子の変異が認められ、この変異が標準治療薬であるアルキル化剤Temozolomide(TMZ)に対する抵抗性の要因となっている。そこで本研究では、MMR変異TMZ抵抗性神経膠腫細胞株を用いて、TMZ抵抗性を克服するあらたな治療の開発することを目的としている。 これまでの研究によって、TMZとPARP阻害剤の併用投与によって、TMZに対する感受性が回復することを見出した。併用治療の効果は主に細胞周期停止による細胞増殖抑制であり、Apoptosisを引き起こす細胞はわずかであった。さらに、この現象のメカニズムを解明するため、Microarrayによる遺伝子発現解析を行った。TMZやPARP阻害剤の作用機序に基づき、DNA損傷反応や、各種DNA修復機構に関連するpathwayに注目したが、予想に反し、コントロール群と治療群での大きな発現変化が認められなかった。一方で治療群ではcellular senescence関連の遺伝子発現に変化が認められたため、この現象に注目した。TMZ、PARP阻害剤併用投与後の細胞では、細胞形態の変化(大型化、扁平化)や、βガラクトシダーゼの蓄積が生じており、細胞老化が誘導されていた。PARP阻害剤に併用による細胞増殖抑制効果について細胞老化現象が関与していること明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究機関の異動により、あらたな研究機関での研究室整備に時間を要したため、研究計画全体に遅れが生じている。2022年度には研究環境が整ったため、細胞培養実験、各種解析を再開しており、研究期間を1年延長し計画を実行している。
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Strategy for Future Research Activity |
TMZ,PARP阻害剤による細胞老化についてさらに解析をすすめる。senescence-associated secretory phenotype(SASP)因子等、細胞老化のバイオマーカーについてRT-PCR、Westernblotingなどにより発現解析を行う。これらの解析結果をもとに、細胞老化の伝達経路、転写制御を解明する。TMZ,PARP阻害剤併用治療では、細胞増殖抑制効果が主であることから、細胞死をもたらすより治療効果の高い薬剤やあらたな標的分子を同定する。
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Causes of Carryover |
学会参加のための旅費を別予算より捻出できたこと。想定より、細胞培養や、試薬物品の支出を効率的に行えた結果である。延長した次年度の細胞培養関連費、解析試薬の購入に使用する予定である。
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