2020 Fiscal Year Research-status Report
ミドカインプロモータ制御型がん治療用ウイルスによる肉腫に最適なウイルス療法の確立
Project/Area Number |
20K16392
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
田口 慧 杏林大学, 医学部, 学内講師 (40625737)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肉腫 / がん治療用ウイルス / ヘルペスウイルス / PDX / ウイルス療法 / ミドカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス療法は固形がんに対する新規治療であり、国内外で難治がんに対する臨床開発が進んでいる。肉腫は難治希少がんであり、理論上ウイルス療法が有効であると考えられるが、肉腫に特化したウイルス療法の開発は行われていない。 本研究は、腫瘍特異蛋白であるミドカイン(MK)をプロモータとして、G47Δ (第3世代がん治療用ヘルペスウイルス1型)の ICP6遺伝子を制御する新規ウイルスを用いて、肉腫に最適化したウイルス療法を確立することを目的とした。また、市販の肉腫細胞株のみならず、国立がん研究センター研究所で樹立されている肉腫PDX (patient-derived xenograft) を用いた検討も行うことで、より臨床に即した検討を行うことも計画した。 研究計画全体としては、市販の肉腫細胞株および樹立した肉腫PDX を用いて、殺細胞効果(in vitro)・ウイルス複製効率(in vitro)・腫瘍縮小効果(in vivo)などを検討する予定である。PDX という臨床に即した材料におけるウイルス療法の有効性を示せれば、「希少難治がんである肉腫に対するウイルス療法」の臨床試験へと進む大きな根拠となる。本研究により、手術以外に根治治療のない難治希少がんである肉腫の治療体系にブレイクスルーがもたらされることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、市販の肉腫細胞株を用いた殺細胞効果(in vitro)の実験を完了させた。G47Δを基本骨格としてMKプロモータの制御下にICP6遺伝子を駆動する新規ウイルスT2-MK、およびコントロールウイルスのT2-proを用いた。市販の肉腫細胞株6種(SW872、RH30、HT1080、RD、Hs729T、SW684)を一定の細胞数でプレートに撒き、T2-MKおよびT2-proを2 段階の力価(MOI 0.1 および0.01)で感染させ、24 時間毎4 日間に渡って生細胞数をカウントした。同日に計測した陰性対照群の生細胞数に対する割合(%)で、ウイルスの殺細胞効果を評価した。高力価(MOI 0.1)のウイルス感染(T2-MK・T2-pro)により、day4にはほぼ全ての細胞が死滅した。現在、これらの肉腫細胞株におけるMKの発現実験(PCR・Western blot)および、細胞内でのウイルス複製能比較試験も進行中である。 また上記と平行して、PDXマウスモデル(免疫不全マウスを用いた皮下腫瘍モデル)の検討も行っている。安定したマウスモデルが確立したら腫瘍縮小効果(in vivo)の検討も行う予定である。おおむね順調に進捗しており、今後も研究計画に従って進めていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り研究は順調に進捗しているため、今後も研究計画に従って進めていく方針である。 今後は、市販の肉腫細胞株6種におけるMKの発現実験(PCR・Western blot)および、細胞内でのウイルス複製能比較試験を完了させるとともに、PDXマウス皮下腫瘍モデルを確立して最終的な腫瘍縮小効果検討実験(in vivo)の実施を目指す。さらに、ウイルス投与後の皮下腫瘍を採取して各種検討(HE 染色による形態学的評価、MK染色によるin vivo での発現評価、等)も行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会発表の機会が当初の見込みよりも少なくなったことなどが影響している。今後社会情勢を見ながら、適正に使用を進めていく予定である。
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