2020 Fiscal Year Research-status Report
プロテオームデータに基づく細胞組成解析手法の開発と胃がん治療効果予測への応用
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20K16403
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
伊藤 寿宏 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (40806593)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗体医薬 / ヒト化抗体 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体医薬品はバイオ医薬品市場における中心的な存在であり、その販売重量は年々増加している。中でも、マウス抗体遺伝子などの一部をヒト抗体遺伝子に組み換えることで作製されるヒト化抗体は、2020年末までに承認された治療用抗体医薬品の半数以上を占めている。 2020年度は、ヒト化抗体を作製するためのワークフローを確立し、止血因子であるフォンウィルブランド因子を特異的に切断する酵素であるADAMTS13に対するヒト化抗体を作製した。次いで、ELISAに基づくin vitro解析により、ADAMTS13タンパク質に対するヒト化ADAMTS13抗体の結合活性および阻害活性を評価した。結果として、本ワークフローにより作製されたヒト化ADAMTS13抗体は、キメラ抗体やマウス抗体と比較して高い結合活性および阻害活性を有することが確認された。 さらに、ADAMTS13に対する抗体結合の分子メカニズムを明らかにするために、バイオインフォマティクス解析による抗体の立体構造予測を行った。結果として、ヒト化ADAMTS13抗体と元のマウス抗体の立体構造に高い類似性がある一方で、ヒト化ADAMTS13抗体では抗原認識に関与するCDRループ構造を支えるアミノ酸残基間に特徴的な水素結合パターンを有することを示唆する結果が得られた。 現在は、ヒト化ADAMTS13抗体の臨床応用に向けて、抗体のカイネティクス解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、胃がん組織のプロテオームデータをもとに、組織内に含まれる細胞の構成を計算科学的に推定する手法を構築する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、サンプルの入手や勉強会への参加を断念せざる負えない状況となり、急遽予定を変更して治療用抗体作製のためのワークフローを確立した。本ワークフローを用いて作製されたヒト化ADAMTS13抗体は、元のマウス抗体と比較して、ADAMTS13に対する高い結合活性および阻害活性を有しており、さらに別の抗体クローンを用いたヒト化抗体の作製も順調に進んでいることから、変更後の研究計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
緊急事態宣言の延長により、胃がん組織のプロテオームデータ取得の目途が立たないため、今後もヒト化抗体作製のためのワークフローの確立、およびその臨床応用を目指す。胃がん治療に用いられている分子標的薬もヒト化抗体であることに加え、新型コロナウイルスに対する治療用抗体についても実験動物および細胞株から安定的に作製できることから、本研究の社会的意義は極めて高いといえる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた実験サンプルの取り寄せやプロテオーム解析、学会などへの参加を断念せざる負えない状況となったため、予算を次年度に持ち越す形となった。一方で、2021年度に参加を予定している国内学会および国際学会が開催されることに加え、2020年度で確立した治療用抗体作製ワークフローで必要な消耗品・備品類の購入や研究成果を発表するための英文校正費・論文投稿費を新たに計上していることから、次年度持ち越し分・2021年度分の予算を満額使用する予定である。
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