2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性活動性EBウイルス感染症における血管障害発症機構の解明と治療法の開発
Project/Area Number |
20K16410
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
大橋 彩香 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 特任助教 (60844371)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 慢性活動性EBウイルス感染症 / 血管障害 / 血液凝固 / 血管内皮細胞 / IL-1β |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は治療抵抗性EBウイルス陽性T, NK細胞腫瘍である。CAEBV患者は高率に血管障害を合併することが報告されている。血管障害は血流低下による臓器障害、動脈瘤による出血に加え、凝固障害も来し、死因の主な原因の一つである。これまでの研究で、血管病変を合併したCAEBV患者の血漿中において、炎症性サイトカインであるIL-1βの高い発現を確認した。血管病変を合併していない患者では、IL-1βは検出されなかったことから、IL-1βがCAEBVにおける血管病変発症に寄与していると考え、研究を進めた。 血管病変を合併したCAEBV患者血漿中で確認された濃度のIL-1βを用いて、血管内皮細胞株(ヒト臍帯静脈内皮細胞株)を刺激した。IL-1βにより、血管内皮細胞の細胞増殖能が抑制されることを確認した。定量PCR法により、凝固促進に働く組織因子(TF)とPAI-1の発現が、IL-1βで刺激した血管内皮細胞において亢進していることを明らかにした。一方で、抗凝固的に働くトロンボモジュリンの発現は抑制された。カルシウム再加凝固時間(PCA)を用いて凝固活性を測定したところ、IL-1βによる血管内皮細胞の凝固活性が亢進していることを明らかにした。 本研究成果は2021年に開催された第34回ヘルペスウイルス研究会、19th International Symposium on Epstein-Barr Virus and associated diseases、第83回日本血液学会学術集会及び、63rd ASH Annual Meeting & Expositionで発表した。さらに、国際紙"Frontiers in Microbiology"にて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進んでおり、炎症性サイトカインであるIL-1βがCAEBVにおける血管病変発症の原因の一つであることを明らかにすることができた。さらに、IL-1βにより、血管内皮細胞中のRNase1の発現が影響を受けたことから、当初の推測通り、血管内皮細胞のRNase1がCAEBVにおける血管病変発症に寄与していると考え研究を継続している。 本研究成果は2021年に開催された第34回ヘルペスウイルス研究会、19th International Symposium on Epstein-Barr Virus and associated diseases、第83回日本血液学会学術集会及び、63rd ASH Annual Meeting & Expositionで発表した。さらに、Frontiers in Microbiologyに論文を発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
CAEBVに併発する血管病変のさらなる病態解明のため、当初の予定通り血管内皮細胞のRNase1に着目して研究を進める。 さらに、以前実施したサイトカインアレイ解析により、血管病変の原因となり得る液性因子として、IL-1βのほかにいくつかの因子を検討している。それら因子で血管内皮細胞を刺激することで、細胞増殖能や凝固活性への影響を検討する。また、IL-1βとの相乗効果も想定し、複数の原因因子によって血管内皮細胞を刺激することで、血管病変発症のさらなるメカニズムの検討を行う。
|
Research Products
(11 results)