2020 Fiscal Year Research-status Report
CD44陽性がん標的指向性を有するプロドラッグ型グルタチオン応答薬物放出システム
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20K16421
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
関 智宏 城西大学, 薬学部, 助教 (20848486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 刺激応答 / CD44 / がんターゲティング / グルタチオン / シスチントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル蛍光物質とした7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)に対し、グルタチオン(GSH)応答開裂基として2-nitrobenzenesulfonyl (NS)基またはジスルフィド基を有するリンカーを化学修飾した。AMCが有する蛍光はNS基およびカルバモイル基を介したジスルフィドの修飾によりOFF状態となることが確認され、前述のAMCアミノ基の修飾がGSH共存により外れることで再びON状態になることを利用して放出性の調査を行った。血液中を模倣したGSH 20μMの緩衝液中におけるAMCの放出はジスルフィド基修飾体では48時間目までに30%程度生じた一方で、NS基修飾体では放出がほとんど見られず、血中環境での安定性が高いことが確認された。 また、モデル薬物としてドキソルビシン(Dox)を選択し、Dox構造中のアミノ糖部分にNS基を修飾することで、本研究のGSH応答プロドラッグとなるNS修飾Dox(NS-Dox)の合成を企画した。3ステップの反応により合成を行い、カラム分離によりNS-Doxが得られたことを、質量分析と1H NMRにより確認した。 一方で、大腸がん、乳がん、膵臓がんなどのがんにおいて過剰発現する表面抗原CD44のバリアントアイソフォーム(CD44v)に対するリガンドであるヒアルロン酸(HA)の、ターゲティング素材および薬物担体としての有用性を検討するにあたり、in vitro細胞内取り込みやin vivo血中濃度推移、標的組織部位への集積を評価する目的でHA構造中のカルボキシ基へのアミノフルオレセインの修飾を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデル蛍光物質を用いてNS修飾とジスルフィド修飾におけるGSH応答放性と安定性の比較ができていること、また、モデル薬物のDoxへのNS基修飾によるプロドラッグ化に成功していることから、その点においては、研究は順調である。 しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により長期間に渡る実験実施者の欠員や、研究代表者の研究以外のエフォートの増加などにより、計画に遅れが生じている。具体的にはNS構造中の置換基の違いによるGSH応答性調節の検討や、効果の調査や細胞を用いた検討である。しかし、NS-DoxやNS修飾AMCからの細胞を用いた放出性や、NS-Doxの血中GSH濃度模倣条件下での安定性が今後確認できれば、NS構造中の置換基の違いによるGSH応答性調節の検討はせずとも、PEG化HAとの組み合わせの検討に進むことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたプロドラッグ部分を担うNS-Doxの、血中GSH濃度条件での安定性および細胞内GSH濃度でのDox放出性についてDoxが有する蛍光特性を利用して調査を行う。必要に応じて、高速液体クロマトグラフィーを用いた定量も行う。 一方で、HAの薬物担体としての可能性を探るため、ポリエチレングリコール(PEG)化などによる表面特性の改変を行う。PEG修飾後もCD44vを介した細胞内取り込み能を維持していることをGSH応答と分離して評価するため、プロドラッグの代わりにフルオレセイン等の蛍光標識PEG-HAを用いてin vitro細胞取り込み実験を行う。モデル細胞としてCD44の高発現が報告されているHCT116を用いる。一方、薬物担体としての血中滞留性を評価するため、蛍光標識のHAやPEG修飾HAを正常ラットまたはマウスに静脈内投与し、経時的に血中濃度を測定する。これらの結果に応じて、適宜PEGの分子量や修飾率の点から改良と評価を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により長期間に渡る実験実施者の欠員や、研究代表者の研究以外のエフォートの増加などにより、計画に遅れが生じたため、試薬等の消耗品の消費が減少した。
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