2022 Fiscal Year Annual Research Report
CD44陽性がん標的指向性を有するプロドラッグ型グルタチオン応答薬物放出システム
Project/Area Number |
20K16421
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
関 智宏 城西大学, 薬学部, 助教 (20848486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 刺激応答 / CD44 / がんターゲティング / グルタチオン / シスチントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請の研究では、CD44陽性がん細胞への薬物送達と同時に、ターゲットとする細胞中で形成される高濃度GSH環境を化学刺激として薬物を放出するDDS確立を検討した。GSH生合成の亢進したがん選択的に抗癌薬が放出される機構構築のため、モデル薬物としてドキソルビシン(Dox)を選択し、Dox構造中のアミノ糖部分にグルタチオン(GSH)応答開裂基として2-nitrobenzenesulfonyl (Ns)基を修飾することで、GSH応答プロドラッグとなるNs修飾Dox(NS-Dox)を得た。Ns-Doxは、緩衝液中で共存するGSHの濃度依存的なDoxの遊離を示した。また、ヒト結腸腺癌由来HCT116細胞にNs-Doxを添加すると、経時的に細胞内でDoxがへと活性化されることがHPLCによる定量と蛍光顕微鏡による分布から確認された。 DoxまたはNs-DoxとDNAの相互作用について、等温滴定型熱量測定(ITC)を用いた結合定数解析から評価した。ITCの結果から、合成により得られたNs-DoxのDNAとの結合定数はDoxと比較して結合親和性が低く、活性化前の毒性が低いプロドラッグとして機能することが期待された。 一方、CD44陽性がんへのターゲティングナノキャリアとしてHAへのPEG修飾を行った。In vivoラットにおいて、PEG非修飾HAでは速やかに消失した一方で、PEG修飾HAはその修飾数に応じて血中滞留性が増加した。これらのことから、本システムの各機能性ユニットの基盤を構築し、コンセプトの証明を行うことができた。統合されたシステムとして今後改良を加えていくことで、標的部位外では薬物を不活性な状態で輸送し、一方で、CD44陽性がん細胞内で活性薬物が放出され、有効かつ副作用の少ないがん治療DDSを実現形に導くことができる。
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