2020 Fiscal Year Research-status Report
胃癌腹水洗浄液におけるDNAメチル化バイオマーカーを用いた新規診断法の開発
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20K16422
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
原田 宏輝 北里大学, 医学部, 助教 (10623192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃癌 / 腹水洗浄細胞診 / DNAマーカー / CDO1遺伝子 / Droplet Digital PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、前向きに早期胃癌症例、進行胃癌症例合わせて400例の腹水洗浄細胞診検体の収集を完了した。本研究は腹水洗浄細胞液中の微量癌細胞を当教室で独自に開発した癌特異的DNA markerを用いて検出し、その結果を臨床病理学的因子と比較する前向き臨床研究である。先行研究であるメチル化特異的Realtime PCR法での研究結果をCancer Science誌に掲載した (Harada H, et al. Cancer Sci. 2021 Apr;112(4):1644-1654.)。方法は腹水洗浄細胞診検体を遠心機で沈査してDNAを抽出し、bisulfite 処理を行い、メチル化特異的PCRを行うという方法である。Primary endpointは CY1を腹膜播種と定義して感度を算出し、腹膜播種がないとされるStage I早期胃癌を腹膜播種陰性と定義し、特異度を算出した。CY1症例の74.2%にDNAのメチル化を認め、Stage I早期胃癌症例の特異度は96.5%であった。 しかし、臨床応用するには、診断精度をさらに向上する必要があると考えられた。そのため、メチル化特異的Real time PCR法にて行っていた従来の方法を改善し、Droplet digital PCR法を応用したメチル化特異的PCR (dd-MSP) を用いて感度・特異度を新たに算出することとした。また、secondary endpointである予後との関連を調べ微量癌細胞検出と腹膜播種の出現についての関係を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に必要な検体収集が完了しているため、順調に調査することが可能であった。微量癌細胞の診断として用いるDD-MSPは分割された液滴で約10,000回のPCR反応が行われる方法であり、限りなくPCRエラーが少ない方法とされている。そのため、実験におけるPCRエラーが少ないことも影響した (内在コントロール遺伝子であるbeta-actinが検出されることはほとんどなかった)。また、今回の primary endpointは感度・特異度としているため必要な情報は手術後ほどなくして判明するため、算出は容易であった。secondary endpointの予後についてだけは一定の経過観察を待つ必要がある。しかし、それは2本目の論文として約1年後に解析する予定であり研究の進捗状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、対象である400検体におけるDroplet Digital PCR法での微量癌細胞の検出診断精度の検討を終えた。primary endpointである DNA markerによる腹水洗浄細胞診の感度・特異度の結果についての論文投稿を控えている状況である。 Secondary endpointについても、解析を進めており、観察期間中央値20か月時点の中間解析ではDroplet Digital PCR法での微量癌細胞陽性症例は、陰性症例と比べて有意に予後不良であった (p < 0.0001)。さらに、従来の細胞診断では予測できなかった腹膜播種再発例におけるPCR陽性例も経験している。中央値36か月の時点で再度予後解析を行い、再発形式との関連も含めてDroplet Digital PCR法での腹膜播種再発例の予測精度について結論を出す。
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Causes of Carryover |
現在微量癌細胞検出の解析は、CDO1遺伝子を用いたDroplet Digital PCR法を行い、解析が終了した。現在、その終了結果を解析し、論文投稿を控えているが、当初の感度100%、特異度100%の予想は達成できなかった。実臨床で使用するためには更なる精度の上昇が必要と考える。今年度は予後の解析を加えること、そしてHOPX、Reprimo遺伝子などの当教室で独自に同定した癌特異的メチル化DNAマーカーを加えて感度、特異度を上昇することができるかどうかを検討する。差額はその解析に使用したい。
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