2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular profiling for precision medicine in cervical cancer
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20K16425
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
町田 弘子 東海大学, 医学部, 助教 (40803507)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | cervical cancer / adenocarcinoma / histological subtypes / survival |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦の子宮頸がんは、2020年に年間10,900人の罹患が推定され、40歳未満の若年女性では2番目に罹患の多い癌である。日本では、ワクチン接種と検診率の低迷が続いているため、 先進国とは逆行して、子宮頸がんは著明に増加している。多くの若い働き盛りの女性や子育て世代の女性が子宮頸がんに罹患し、妊娠が出来なくなり、命を失っている日本の現状は、非常に深刻な問題である。なかでも子宮頸部腺癌は、健診での早期発見が難しく、既存の標準治療や放射線療法に感受性が低い予後不良な癌である。そのため遺伝子異常を標的とした新規治療法の開発が求められている。 日本産科婦人科学会悪性腫瘍登録データベースを使用した我々の先行研究では、子宮頸部腺癌には様々なサブタイプが存在し、その生存予後は異なることがわかった。 サブタイプを2つに分けType1:通常型内頸部腺癌、類内膜癌 とType2:粘液性癌、明細胞癌、漿液性癌は、その腫瘍特性や予後は異なることも分かった(Cancers. 2020 May 15;12(5):1251)。 そこで本研究では、その子宮頸部腺癌を対象に、生物学的特徴を明らかにすること目的として、ゲノム解析によって得られた特徴を病理組織学的サブタイプ別に評価し、分子標的薬のターゲットとなる遺伝子を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年から2021年までの、当院で初回治療を行った子宮頸部腺癌症例から18検体を得た。対照は、同時期の子宮頸部扁平上皮癌と正常組織を使用した。治療開始前の検体組織(新鮮凍結標本)に発現している遺伝子異常をBCAR4、CD274、PDCD1LG2、KRAS、ARID1A、PTEN、ALK、EGFR、ROS1、BRAF、PIK3CA, EP300、FBXW7、SHKBP1、TGFBR2、TGFBR2 、SMAD4、ERBB3、ERBB2、KLF5でゲノムシーケンスの測定・解析を行った。
結果、子宮頸癌細胞では正常組織と比較してALK, ROS1, EGFR, TGFBR2, ARID1A, BRAFの遺伝子異常が多いことがわかった。なかでも頸部腺癌腫瘍細胞ではALK, ROS1,EGFRが高頻度に遺伝子異常がin vitroで認められた。これらの遺伝子変異プロファイルをサブタイプ別に比較したところ、Type1・2で発現に差を認めたが、統計的有意差には至らなかった。予後不良のType2子宮頸部腺癌では、EP300, PTEN, FBXW7, およびKARASの遺伝子発現頻度が高い傾向があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更なるサンプルサイズの追加を行い、統計的に有効な症例数を集めたい。また今回、腫瘍から得られた遺伝子発現をもとに、治療前に採取した血液を使用して、血中遊離DNA(Cell free DNA)でも遺伝子変異を認めるか解析を行う予定である。 これらの結果をもとに子宮頸部腺癌サブタイプ別の遺伝子プロファイルと再発・生命予後との相関を検討する。 また、得られた遺伝子情報と臨床情報をもとに、再発までの期間や現病死といった予後についてPrediction modelをたてて予後予測因子となる遺伝子をサブタイプ別に統計学的に検討する予定である。 遺伝子異常の同定から、分子標的薬の標的となり得る子宮頸部腺癌に有効な分子標的薬を選出するだけでなく、 Cell-free DNA陽性症例の場合に術後療法の必要性を検討する。このようにして子宮頸部腺癌の治療に有効な新たな治療戦略を提案していく。
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Causes of Carryover |
研究検体は東海大学産婦人科・三上教室(町田)により提供し、DNA抽出後にdigital PCR、次世代シーケンスは研究協力施設(東海大学生命科学統合支援センター・次世代シーケンシングチーム)で施行したが、コロナ禍で予想採取検体数を下回ったため残額が生じた。残額は次年度の研究消耗品費(チップなどの研究材料費)にあてる予定である。次年度は、症例検体のさらなる蓄積と解析を継続し、解析結果をふまえて、臨床データと関連解析を行う。個々の遺伝子変異やコピー数異常、融合遺伝子の発現の高低といった網羅的解析を行い、発現の差異が予後へ与える影響やターゲットとなる遺伝子を様々な側面から統計学的解析を行う。本研究結果について国内外での学会、論文で公表する予定である。
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