2020 Fiscal Year Research-status Report
強力な免疫チェックポイント分子阻害能を有する新たな腫瘍溶解性ウイルスの開発
Project/Area Number |
20K16438
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
向山 宣昭 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40847521)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解性ウイルス / C-REV / 腫瘍免疫 / 免疫チェックポイント阻害剤 / PD-L1 / PD-1 / ヘルペスウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍特異的に感染し、腫瘍を崩壊する。さらに、破壊された腫瘍が癌抗原を放出することにより癌免疫応答を惹起する。本研究は、T細胞 の機能を抑制する免疫チェックポイント分子を阻害する新たな腫瘍溶解性ウイルスの開発を目的とする。本研究の独創的な点は、腫瘍溶解性ウイルスに免疫 チェックポイント分子であるPD-L1に対する抗PD-L1 scFvのみならず、PD-L1に結合するPD-1の細胞外領域(PD-1(1-239))を発現させ、免疫チェックポイント分 子の結合を強く抑制することにより、腫瘍内特異的に免疫チェックポイントを阻害すると共に、腫瘍溶解性ウイルスが直接腫瘍を溶解し、腫瘍特異的なリンパ球 を誘導することにより抗腫瘍免疫をより強固にすることにある。 今年度は、抗PD-L1 scFvおよびPD-1の細胞外領域発現C-REV(C-REVαPD-L1-PD-1(1-239))を作製した。抗マウスPD-L1 scFvの塩基配列はGenBankより入手し、人工遺伝子合成により作成した。活性化マウスT細胞からRNAを抽出、逆転写酵素によりcDNAを作成し、PCR法にてPD-1(1-239)を増幅した。PCR産物をTAクローニングし、塩基配列をシークエンスにより確認した。さらに2A配列を含むprimerを作成し、overlap PCR法にてPD-L1-2A-PD-1(1-239)を作成した。この遺伝子をHSV1 UL43領域に相同組み換えで組み込むためのTarget vectorに挿入した。Lipofectamin3000 を用いてVero細胞にC-REVのゲノムDNAと上記のベクターをトランスフェクションし、相同遺伝子組み換えによりUL43に抗PD-L1 scFvとPD-1細胞外領域(PD-1(1- 239))を発現するC-REVの作製を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗PD-L1 scFvおよびPD-1の細胞外領域発現C-REV(C-REVαPD-L1-PD-1(1-239))を作製:抗マウスPD-L1 scFvの塩基配列はGenBankより入手し(KF041825)、人工遺伝子合成により作成した。活性化マウスT細胞からRNAを抽出、逆転写酵素によりcDNAを作成し、PCR法にてPD-1(1-239)を増幅した。PCR産物をTAクローニングし、塩基配列をシークエンスにより確認した。さらに2A配列を含むprimerを作成し、overlap PCR法にてPD-L1-2A-PD-1(1-239)を作成した。PCR産物をTAクローニングし、塩基配列をシークエンスにより確認した。この遺伝子をHSV1 UL43領域に相同組み換えで組み込むためのTarget vectorに挿入した。Lipofectamin3000を用いてVero細胞にC-REVのゲノムDNAと上記のベクターをトランスフェクションし、相同遺伝子組み換えによりUL43に抗PD-L1 scFvとPD-1細胞外領域(PD-1(1-239))を発現するC-REVの作製を試みた。Target vectorはGFPを発現することから、GFP発現を指標に細胞を採取し、ウイルス感染細胞を得た。ウイルス感染細胞からウイルスを得て、さらにVero細胞に感染させた。現在、得られたウイルスのVero細胞への感染を繰り返すことにより、高純度のウイルスを得ることを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗PD-L1 scFvならびPD-1の細胞外領域のPD-1/PD-L1結合阻害、および殺細胞効果の検討: In vitroでPD-L1発現細胞と活性化T細胞を共培養し、そこにC-REVαPD-L1-PD-1(1-239)感染細胞の培養上清を加え培養する。FACSを用いて活性化T細胞を検出し、抗PD-L1 scFvならびPD-1の細胞外領域のPD-1/PD-L1結合阻害活性を調べる。さらに、C-REVまたはC-REVαPD-L1-PD-1(1-239)を1, 0.1, 0.01 MOIでSCC7細胞に感染させ、経時的に培養上清中のウイルス力価を測定し、ウイルス増殖能を調べる。また、SCC7細胞を96 well plateに播き、C-REVまたはC-REVαPD-L1-PD-1(1-239)を1, 0.1, 0.01 MOIで感染させ、経時的にMTT assayにより細胞の生存率を調べ、殺細胞能力を確認する。 In vivoでの抗腫瘍効果を調べるために、マウス扁平上皮癌細胞株SCC7をマウス皮下に2つ移植する。7日後、一方の腫瘍にMock (PBS)、C-REVαPD-L1-PD-1(1-239)、または親株C-REVを腫瘍内に注射する(3日おきに3回)。継時的に腫瘍サイズとマウス体重を測定し、治療効果を明らかにする。 抗腫瘍効果発現機序解析として、T細胞、癌随伴マクロファージ、樹状細胞(DC)ならびに免疫抑制性機能を有する骨髄由来抑制細胞の腫瘍への浸潤を調べ、腫瘍環境の変化を確認する。
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