2020 Fiscal Year Research-status Report
血中および組織内スニチニブ代謝物濃度に基づく個人差の要因解明と効果予測の構築
Project/Area Number |
20K16454
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
竹中 美貴 昭和大学, 薬学部, 助教 (50865623)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スニチニブ / 腎癌 / 薬物濃度 / 個人差 / 要因 / 効果予測モデル / 構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
スニチニブは転移性腎細胞癌に対して第一選択薬である。しかし、手足皮膚反応などの重篤な副作用を高頻度に発現するため、治療継続が困難となり、減量や中止を余儀なくされる。スニチニブの重篤な副作用を回避し、最大限の治療効果を得るために、スニチニブの血中薬物濃度に基づく薬物投与量設計や遺伝子多型の解析が有用とされてきた。しかし、その血中濃度や遺伝子多型と効果・副作用の個人差の関係までは、明確に分かっていない。先行研究の手足皮膚反応に着目した解析結果では、光の影響を受けるスニチニブ代謝物としてスニチニブN-オキシドがスニチニブ内服患者の血中に存在することが報告されている。また、スニチニブN-オキシドがスニチニブの副作用に関係している可能性が考えられる。したがって、スニチニブの治療効果や副作用の個人差の要因を解明するためには、スニチニブの代謝物の濃度や血液以外の組織内濃度にも着目して検討することが重要である。そこで、スニチニブ内服患者の血液・皮膚・爪のスニチニブ代謝物濃度および遺伝子多型とスニチニブの効果および副作用との関係を検討し、スニチニブの効果および副作用に関する個人差の要因の解明と信頼性の高い治療効果予測モデルを構築する。 本研究において、血中濃度や遺伝子多型と効果・副作用の関係が明らかになれば、遺伝子多型解析による個々の患者の副作用の発生リスクの予測や定期的な血中濃度の測定による副作用の回避や有効な血中濃度維持のための最適な薬物投与設計が可能となる。また、本モデルより、スニチニブ継続投与可能な患者を治療早期に選択できれば、個々の患者に効果・副作用を考慮した投与量や投与期間の個別化治療の提案が可能となり、副作用の重篤化の回避と全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の延長につながると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)血中および組織内のスニチニブ代謝物濃度に基づくスニチニブの効果・副作用の関係性の評価と個人差の要因の解明 本研究の実施において、倫理審査委員会の書類を作成し、昭和大学ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査委員会の承認を取得した。患者から同意取得し、スニチニブ投与後の定常状態の血液・皮膚・爪サンプルの回収を進めている。今後、回収した検体を用いて、スニチニブ、SU12662およびスニチニブ N-オキシド濃度を高速液体クロマトグラフ法で測定する予定である。患者から得た血液サンプルを用いて、スニチニブの代謝や体内動態の変動に関連する遺伝子多型をTaq Man Probe法で測定を実施中である。今後、効果や副作用発現との関係を評価し、スニチニブの効果(OS、PFS等)および副作用(スニチニブ内服開始6週間以内)に関する個人差の要因の因子解析を行う。 2)スニチニブの効果予測モデルの構築 本研究の実施において、倫理審査委員会の書類を作成し、昭和大学臨床研究倫理委員会の承認を取得した。また、転移性腎細胞癌のスニチニブ内服患者の患者背景因子や有害事象因子や各種臨床検査値等に関する情報を診療録から抽出し終えた。現在、スニチニブ治療効果の(OS、PFS等)に影響を与える因子の解析を行い、効果予測モデルの構築を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)血中および組織内のスニチニブ代謝物濃度に基づくスニチニブの効果・副作用の関係性の評価と個人差の要因の解明 血液・皮膚・爪サンプルの検体を用いて、スニチニブ、SU12662およびスニチニブ N-オキシド濃度を高速液体クロマトグラフ法で測定する。血液サンプルを用いた高速液体クロマトグラフ法によるスニチニブ、SU12662およびスニチニブN-オキシドの血中濃度の測定系はすでに確立済みである。今後、組織内濃度測定においては、皮膚、爪のサンプル処理方法を検討し、濃度測定系の確立は行う。 2)スニチニブの効果予測モデルの構築 転移性腎細胞癌のスニチニブ内服患者の患者背景因子や有害事象因子や各種臨床検査値等に関する情報を診療録から抽出完了済みである。今後は、スニチニブ治療効果の(OS、PFS等)に影響を与える因子の解析を行い、効果予測モデルの構築を行う。
|
Causes of Carryover |
皮膚・爪サンプルの検体を用いたスニチニブ、SU12662およびスニチニブ N-オキシド濃度を高速液体クロマトグラフ法で測定について、測定系の条件検討がまだ完了しておらず、測定系の確立段階まで到達していないため、次年度使用金が生じた。測定系が確立した後に、消耗品等でこの金額分が使用される見込みである。
|
Research Products
(1 results)