2021 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病における時間認知障害―関係発達論による神経心理学の展開―
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20K16476
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
杉本 あずさ 昭和大学, 医学部, 講師 (10726532)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 主観的時間認知 / 質問紙 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年「こころの時間」として研究が発展している主観的時間のアルツハイマー病(AD)における障害に注目し、神経基盤の解明および臨床への応用を目指す。具体的には、質問紙により主観的時間とその障害を評価し、統計学的なパス図を用いてそれらの心理過程を明らかにする。 2021年度は、カイロス時間およびその障害を測定する質問紙の作成を進行させた。先行研究の結果に基づいて項目を策定した質問紙を、主としてアルツハイマー病やその他の外来患者を対象として、配布および回収したデータの解析を行った。健常対象者として、若年成人27名と高齢者29名に質問紙を施行した。因子分析を用いて、過去・現在・未来の3因子構造をもつ尺度を作成し、信頼性と妥当性を確認した。同質問紙をAD患者21名に実施し、ADと対照群の比較では、過去・現在および未来にも有意差を認めた。 また、主観的時間認知の項目と併行して、社会的参照能力を反映すると考えられる二重誤信念課題および抑うつのスクリーニングも行った。それにより、主観的時間認知質問紙の信頼性や妥当性を検証するのみならず、認知症診療に関係発達論の視点を取り入れることを意図している。AD診療の臨床では、取り繕いやhead turningといった特徴的な所見が知られている。記憶力など個の能力の低下を、社会的技能で補おうとする(が失敗している)方略がみられる (池田, 2015) 。AD患者には特異的な関係性の認知機能障害が想定され、社会的参照能力を必要とする主観的時間にも、その影響が予想される。そのため、主観的時間認知の質問紙を作成するにあたって、社会的参照能力も測定し、その関連を評価することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外来患者を対象としているが、新型コロナウイルス感染症流行により特に急性疾患ではない認知症などでは受診あるいはアンケート参加などの診療外の活動への参加を控える傾向もみられ、対象者数が当初の想定ペースで増えない。
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Strategy for Future Research Activity |
大枠の研究計画およびその進行や得られた結果には、当初の想定との大きな相違はないため、引き続き進行する。研究期間延長の可能性を考慮している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行による外来受診行動の変化により、研究の進行に遅れがみられたため。今年度の未使用額は次年度以降、前年度使用予定に準じて旅費等に使用予定である。
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