2020 Fiscal Year Research-status Report
社会秩序形成の神経基盤:垂直罰による協力行動の促進
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20K16477
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
飯島 和樹 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (60743680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | fMRI / 実験哲学 / 第三者罰 / 哲学 / 自由意志 / 社会脳 / 協力 / 垂直罰 |
Outline of Annual Research Achievements |
懲罰は社会秩序を支える重要な基盤である.近年,直接利害のない第三者から利己的な行為者に対して与えられる「第三者罰」が協力行動の維持に重要であることが示されている.本研究では,第三者罰の中でも,集団メンバーから与えられる「水平罰」ではなく,権威者から下される「垂直罰」こそが,集団内の懲罰量の一貫性の源を与え,協力行動を促進し,さらには安定した社会秩序の基盤となるとする応募者自らの仮説(「垂直罰仮説」)を検証し,社会秩序形成の起源とその神経基盤を解明する.本研究は,近代社会についての根源的な理解をもたらすとともに,制度設計や紛争への介入法にまで至る広範な波及効果を持つと期待できる. 研究計画の前半(2020-2021 年度)では,機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 計測と集団実験を組み合わせ,垂直罰仮説の検証と,量刑判断の収束と協力行動の促進に関わる脳領域の同定を行う予定であったが,2020年度は新型コロナウィルス感染症対策のため,対面での実験が実施不可能となった. そのため,懲罰の前提となる自由な行為に関する基礎的な研究をオンライン実験を活用して進めた.Web ブラウザ上で実施可能な VR 実験プログラムを Unity にて作成し,数回の予備実験を重ねて内容を精緻化した後に,本実験を実施し,約 167 名からデータを取得することができた.データはほぼ解析を終えており,2021 年度の論文化に向けて議論を続けている. 解析結果によれば,人々は複数の選択肢から制限のない選択を行う際に,他行為可能性および源泉性を伴う経験をしている.しかし,そうした経験を,決定論的な世界では錯覚として見なせるような非両立論的な性格を有するものとして人々は捉えているということが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため,当初計画していた fMRI 社会実験の実施は極めて困難な状況となっている.しかし,計画を柔軟に修正し,オンラインで代替実験を完了させることができ,論文化の見込める良質なデータが取得できた.この成果は本研究計画を基礎づける性格を持つものである.さらに,次なる研究に繋がるアイディアも豊かに発展させることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2020 年度に取得したオンライン代替実験のデータを論文化し,出版する.また,本年度作成した本実験のプログラムを改善させつつ,新型コロナウィルス感染状況の収束を待って,本実験の実施を進める.状況が改善しない場合は,2020 年度に行った研究を発展させたオンライン新実験を実施する.
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Causes of Carryover |
2020 年度は新型コロナウィルス感染症対策のため,対面での実験が実施不可能となった.そのため,懲罰の前提となる自由な行為に関する基礎的な研究をオンライン実験を活用して進めた.次年度使用額は,感染症の状況が落ち着いた場合,主に,今年度遂行できなかった fMRI 実験の被験者謝金に当てる予定である.また,感染症の状況が改善しない場合は,新たなオンライン実験の遂行のために充当する.
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Research Products
(5 results)