2021 Fiscal Year Annual Research Report
Glymphatic systemを介した睡眠障害を伴う認知機能障害の改善効果
Project/Area Number |
20K16478
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長尾 昌紀 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (70806372)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳血管認知症 / 睡眠障害 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管認知症(VaD)では睡眠障害が頻発し、認知機能の進行を惹起させることから、適切な睡眠障害の治療が認知症の進行抑制に期待される。アストロサイトは認知機能や睡眠の調節、GABAの代謝、脳内不要物質の排泄機構(glymphatic system)などを担っているため、VaDの睡眠障害がアストロサイトのglymphatic system異常やGABA代謝異常を誘発し、認知機能障害の進行に繋がっている可能性がある。本研究では、VaDモデルラットの行動変化に対する睡眠促進薬の効果をglymphatic systemに着目して検討している。前年度はglymphatic system促進薬であるmedetomidine (MED)がVaDモデルラットの空間記憶障害を改善する可能性があり、その機序には海馬のアポトーシス実行因子cleaved caspase-3を抑制する事が考えられた。本年度は睡眠移行時の紡錘波出現に関与し、GABA作動性神経からなる視床毛様核において、cleaved caspase-3およびGABA合成酵素のGAD65、GAD67の蛋白発現量を検討した。その結果、VaDモデルラットはGAD67発現の減少傾向を示し、MED群はこれに対する変化を示さなかった。またcleaved caspase-3とGAD65発現量は全ての群間で変化を示さなかった。従って、VaDモデルラットでは視床網様核におけるGABAの合成が減少しており、これが同モデルラットの睡眠障害の誘発機序の一つと考えられた。またMEDはGAD67の減少に対する改善を示さなかったため、空間記憶障害の改善にはGABA合成系ではなく海馬アポトーシス抑制による機序が示唆された。しかしながら、MEDの視床網様核のGABA合成酵素と海馬アポトーシスとの関係性については、実験が不十分であるため更なる検討が必要である。
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