• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2020 Fiscal Year Research-status Report

経過時間判断における海馬時間細胞の役割の解明

Research Project

Project/Area Number 20K16480
Research InstitutionInstitute of Physical and Chemical Research

Principal Investigator

新保 彰大  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90868225)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2022-03-31
Keywords時間細胞 / 海馬 / インターバル計時 / 相対的時間情報表現
Outline of Annual Research Achievements

現在までに,申請研究で提案した実験をすべて実施し,論文として発表した。実験1として,時間細胞が選択的に応答する時間情報が何か明確にするために,計時時間を延長する実験操作を導入し,時間細胞の発火率の変化するパターンを検討したところ,76%のニューロンが経過時間ではなく計時時間全体に占める経過時間割合に対して選択的に応答した。さらに,海馬における特徴的な脳波である約8Hzのシータ波の位相と発火のタイミングの関係が情報を表現する時間符号化であるシータ位相前進も計時時間延長に伴い,位相前進が遅くなるといった相対的な情報表現を行っていた。これらの結果は,海馬時間細胞の大多数は計時時間の経過時間割合に選択的に応答することを示している。
実験2として,時間細胞群より推測される経過時間情報は,個体の経過時間に対する判断と関連しているのかを検証した。時間弁別課題中に中間の走行時間(7.07秒)の走行を求めるテスト試行を導入した。1セッションで得られた相対型時間細胞群の活動パターンをもとに,テスト試行での神経活動より予測される時間を10秒試行で正答反応をLong反応, 5秒試行での正答反応をShort反応とし,Long反応試行とShort反応試行間で比較した。その結果,Long反応試行では, Short反応試行の 推測された時間よりも有意に後の時間が推測された。この結果は,時間細胞の活動より推測される時間が大きいほどLong試行と判断するという,時間細胞の活動と個体の経過時間判断との間に関連性があることを示している。
この2つの実験結果は,時間細胞による相対的な時間情報表現は,海馬錐体細胞は計時時間に合わせて柔軟に自身の時間表象を変更可能であることを示している。さらに,推測された計時時間によって個体の判断が変化していることからも,海馬の時間情報を課題遂行に利用している可能性が示唆される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

計画以上に遂行している理由として,研究計画に記している実験を遂行し,論文を発表しただけでなく,新たな実験課題にも着手し始めたことがあげられる。
本年度は,申請研究のデータをまとめ,Science Advances誌にその内容を報告した。また,研究内容を第43回日本神経科学大会において発表したところ,発表動画のいいね獲得数が第3位となり表彰された。さらに,心理学評論誌において,インターバル計時に関する総説論文についてのコメント論文を発表した。
研究自体も論文発表で終了せずに継続し,下記に記す,海馬CA1および,背内側線条体と眼窩前頭全皮質領域から同時計測を行う実験課題の準備を行った。行動課題は本研究計画の時間弁別課題を使用するため,すでに確立されている。現在,3領域から適切に神経活動を記録する手術の手技の確立に努めており,確立後は,順次,神経活動を記録し,解析を行う予定である。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究において,海馬における時間細胞が相対的な時間情報を表現しており,時間細胞の活動が個体の時間長判断に関連することを示した。しかし,海馬時間細胞の活動はインターバル計時においてどのような役割を担っているのかはまだ解明できていない。そこで,海馬時間細胞の時間情報処理における役割を解明するために,計時遂行時の海馬以外の脳領域における神経活動の特徴や海馬との領域間の相互作用を明らかにする必要がある。そのため今後の研究方向として,本申請研究で使用した時間弁別課題遂行時のラットから,海馬CA1および,背内側線条体と眼窩前頭全皮質領域を同時計測し,それぞれの神経活動の特徴および,その相互作用を検討する。背側線条体はこれまで,インターバル計時における中心的な処理を行うと考えられてきた部位である(Mattell and Meck, 2004)。眼窩前頭皮質は意思決定基盤として,複雑な課題の遂行に関与している(Izquierdo, 2017) 。また,眼窩前頭皮質は海馬からの情報入力を受けるだけでなく(Wikenheiser et al., 2017),背内側線条体へと投射している(Hintiryan et al., 2016)。2つの脳領域ともに,時間細胞様の活動パターンを示すなど,時間情報を表現していることが報告されている(Bakhurin et al., 2017)。
そこで2021年度は,これらの3領域の時間細胞に着目し,それぞれがどのような特徴を持つのか,領域間の関係性について検討していく。特にそれぞれの領域の脳波の関係性や,特徴的な脳波と神経活動の関係性を明らかにし,インターバル計時におけるそれぞれの役割を検討したい。

  • Research Products

    (3 results)

All 2021 2020

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Scalable representation of time in the hippocampus2021

    • Author(s)
      Shimbo Akihiro、Izawa Ei-Ichi、Fujisawa Shigeyoshi
    • Journal Title

      Science Advances

      Volume: 7 Pages: eabd7013

    • DOI

      10.1126/sciadv.abd7013

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] インターバルタイミングの神経メカニズムの解明を目指して―鎌田論文へのコメントー2020

    • Author(s)
      新保彰大
    • Journal Title

      心理学評論

      Volume: 63 Pages: 233~237

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Hippocampal time cells represent elapsed time relatively2020

    • Author(s)
      Akihiro Shimbo, Ei-Ichi Izawa, Shigeyoshi Fujisawa
    • Organizer
      第43回日本神経科学会

URL: 

Published: 2021-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi