2020 Fiscal Year Research-status Report
Pathogenesis of neurodegenerative disease caused by kinesin mutation and its structural analysis
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20K16483
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 真夏 (森川真夏) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80854885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | KIF1A / キネシン分子モーター / 遺伝子変異 / シャルコー・マリー・トゥース病 / 神経変性疾患 / CMT2 |
Outline of Annual Research Achievements |
KIF1Aのモータードメインβ7領域の変異は、軸索型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2)の発症に関わる。本研究課題では、β7領域の機能をKIF分子内相互作用の観点から明らかにする。また、β7領域の異常が一次感覚神経細胞であるマウス脊髄後根神経節(DRG)ニューロンの軸索輸送へ与える影響を調べ、CMT発症のメカニズムを探ることを目的とした。これらに関して以下の進捗があった。 (1)スライドガラスに固定したβ7変異体が微小管を動かす速度、微小管上運動に伴うβ7変異体のATP加水分解速度、微小管との結合親和性を測定したところ、微小管との結合能は野生型と同等だが、ATP加水分解のサイクルがβ7変異体で遅れていることが明らかになった。(2)野生型およびβ7変異型の「モータードメイン+ネックリンカー+ネックコイル」コンストラクトのX線結晶構造解析を行い、ATP加水分解の遷移状態におけるβ7領域とネックリンカーの結合を可視化した。(3) 神経軸索内での輸送活性を調べるため、蛍光標識したβ7変異体をDRGニューロンに強制発現させライブイメージングを行った結果、β7変異体は野生型よりも軸索輸送のスピードが遅いことがわかった。輸送の方向性に違いはなかった。(4) Kif1aヘテロマウスのDRGニューロンでは、痛みや熱さの感覚の発生に関わるTrkA、そしてNGF-TrkAシグナル伝達系によって細胞表面に提示されるカプサイシン受容体TRPV1(Tanaka et al., Neuron 90, 1215-1229, 2016)の局在が軸索遠位部で有意に減弱した。この表現型は野生型KIF1Aの過剰発現によってレスキューされたが、β7変異体の過剰発現ではレスキューされなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度の研究計画は予定通りに完了し、2021年度に予定していた研究計画の2項目のうち、「KIF1Aカーゴの局在解析」も概ね終了した。このため、β7領域の変異によりモーター運動機能が損なわれることがin vivo, in vitro両面で明らかになり、計画以上の結果を得ることができた。また、β7変異体と野生型の三次元構造の比較から、β7変異体では異常に強い分子内相互作用が発生していることが明らかになった。これがモーター活性の低下、カーゴ輸送機能の低下、CMT2の発症につながると強く示唆されるため、論文の投稿の準備も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はまずは当初の研究計画の残りの一つを遂行する。2020年度に得られたβ7変異体の構造情報を元に、β7領域が関連する分子内結合について、野生型とβ7変異体の比較を行う。既に所属研究室にて確立されている質量分析を応用した網羅的・定量的な測定系(Ogawa et al., Cell Rep. 20, 2626-2638, 2017)に基づき、β7領域とネックリンカー領域の結合能を定量する予定である。さらに、今回得られた構造を精査することによって、β7領域がATP加水分解に伴うネックリンカーの構造変化の調節の他にも役割を持つ可能性が浮上した。そこで当初の申請の内容からさらに内容を深め、β7変異がKIF1A自己阻害活性に関与するかどうかも調べ、論文をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
申請当初は、成果の発表と情報収集・情報交換のために国際学会と国内学会のへの参加を予定していた。しかし新型コロナウイルスの拡大により参加を見送ったため、学会参加のために計上していた旅費を使うことがなかった。一方で、実験が計画以上に進捗したため、細胞培養のための消耗品費及びマウス飼育用の試薬費が当初の予定よりも多額となった。今年度は引き続き培養や免疫染色実験・生化学実験を行い、論文の投稿を目指していく。そのため、培養関連試薬やマウス維持関連試薬、抗体などの消耗品費のほか、論文掲載料などの支出を見込んでいる。
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