2021 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合蛋白質FUSのmRNA過結合を介した筋萎縮性側索硬化症の病態解明
Project/Area Number |
20K16489
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横井 聡 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (30815460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / シナプス / iPS細胞 / CRISPR/Cas9 / FUS |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室は既報でFUS機能喪失マウスモデルを用い、FUSのSynGAP mRNA安定化機構の破綻がシナプス形態異常を引きおこし、認知行動障害を引き起こすことを明らかにした。この機構が筋萎縮性側索硬化症の病態生理に関係しているかどうかを調べるべく、JaCALSデータベースからSynGAP 3'UTRの新規変異を発見し、ヒトモデルでの確認を行うために、iPS細胞から分化誘導した運動神経でその変異の機能解析を行った。確立した実験条件において、患者由来のSynGAP新規変異を導入したiPS細胞由来運動神経の機能解析を行ったところ、患者変異のある遺伝子編集株において、シナプス数の減少が確認された。また、FUSはhnRNPKと共に新規変異によりSynGAP mRNAに過結合していることも新たに発見した。さらに、RNA結合蛋白質のノックダウン実験により、FUSよりもhnRNPKがSynGAPのスプライシング変化が生じることがわかった。SynGAP mRNAのモチーフ解析からhnRNPKの結合サイトを予測し、そのサイトを含む形のアンチセンスオリゴを開発したところ、hnRNPKの過結合を抑制する配列を同定した。このアンチセンスオリゴは患者変異によるSynGAPのスプライシング異常を一部是正し、iPS細胞由来運動神経のシナプス数を回復することが分かった。以上から、患者由来SynGAP変異はシナプス異常という病態のごく早期の状態を引きおこすことが判明し、RNA結合タンパク質の過結合は新たな病態機序である可能性が示唆された。本研究で開発したアンチセンスオリゴは今後患者治療における有用な化合物となる可能性がある。
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