2020 Fiscal Year Research-status Report
プロテインC制御系の制御・調節を標的とした新しい癌の診断法および治療法の開発
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20K16535
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
秋田 展幸 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 准教授 (70597327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテインC |
Outline of Annual Research Achievements |
血液凝固系は、セリンプロテアーゼ前駆体のセリンプロテアーゼへの逐次的活性化反応により、効率的に創傷部位に止血栓を形成する、生体にとって必要不可欠な生体防御機構である。一方で、生体にはプロテインC凝固制御系などの過剰な血栓形成を制御する系も備わっている。プロテインC凝固制御系は、プロテインCがトロンボモジュリン(TM)と血管内皮プロテインC受容体(EPCR)存在下で活性化され、生成した活性化プロテインC(APC)が血液凝固補酵素蛋白質である第Va因子や第VIIIa因子を分解・失活化することにより、過剰な凝固の進行を制御する。一方で、APCはEPCRを介して血管内皮細胞保護作用や抗炎症作用を発現することも明らかになっている。プロテインC凝固制御系と癌細胞の増殖や浸潤・転移との関連については、癌細胞にもEPCR発現が認められ、EPCR高発現細胞では、低発現細胞に比較して細胞増殖能が亢進することが明らかになっていることから、EPCRと癌細胞の増殖さらにはそれとプロテインC凝固制御系との関連が推測されるが、詳細は明らかではない。このような背景の下、我々はこれまでにAPCの生理的阻害因子であるプロテインCインヒビターが癌の発生、増殖、浸潤・転移を阻害することを報告し、間接的にAPCの癌細胞の増殖、浸潤・転移における重要性を示唆してきた。本研究では、癌組織内においてプロテインC凝固制御系が存在・機能していることを明らかにした上で、APCの癌細胞の増殖、浸潤・転移に及ぼす影響を検討するとともに、APC-EPCR系、更にはプロテインC凝固制御系の癌の増殖、浸潤・転移の影響を明らかにすることを目的とし現在、マウス骨肉腫細胞株のDunn細胞を用いてマウス担癌モデルを作成し、癌組織内におけるAPC、TM及びEPCRなどのプロテインC凝固制御系に関わる因子の存在を免疫組織染色法により同定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度は担癌モデルマウスの癌組織内における活性化プロテインC、トロンボモジュリン及び血管内皮プロテインC受容体などのプロテインC凝固制御系に関わる因子の同定、各種プロテインC凝固制御系因子に対する抗体を用いたプロテインC凝固制御系の癌細胞の増殖、浸潤・転移に及ぼす影響の解析を予定していたが、我が国における新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大に伴い、新型コロナウイルス感染防止対策の一環として在宅勤務が推奨されたことにより研究時間が制限された上に、国外からの輸入に頼っている細胞培養用の器材やプロテインC凝固制御系を構成する各種タンパク質に対する抗体などの入荷が著しく遅延したことなどにより、現在、担癌モデルマウスの癌組織内におけるプロテインC凝固制御系に関わる因子の同定を実施している段階であり、当初の計画よりやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず担癌モデルマウスの癌組織内におけるプロテインC凝固制御系に関わる因子の同定を早急に行い、次いでプロテインC凝固制御系の癌細胞の増殖、浸潤・転移に及ぼす影響の解析、さらにはプロテインC凝固制御系の制御・調節による癌の増殖、浸潤・転移の制御の可能性についての検討を行い、癌組織におけるプロテインC凝固制御系の存在と機能を明確にし、活性化プロテインC-プロテインC受容体経路、さらにはプロテインC凝固制御系の癌の増殖、浸潤・転移における役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大に伴い、新型コロナウイルス感染防止対策の一環として在宅勤務が推奨されたことにより研究時間が制限された上に、国外からの輸入に頼っている細胞培養用の器材やプロテインC凝固制御系を構成する各種タンパク質に対する抗体などの入荷が著しく遅延したことなどにより、現在、担癌モデルマウスの癌組織内におけるプロテインC凝固制御系に関わる因子の同定を実施している段階である。 次年度は、まず担癌モデルマウスの癌組織内におけるプロテインC凝固制御系に関わる因子の同定を早急に行い、次いでプロテインC凝固制御系の癌細胞の増殖、浸潤・転移に及ぼす影響の解析、さらにはプロテインC凝固制御系の制御・調節による癌の増殖、浸潤・転移の制御の可能性についての検討を行い、癌組織におけるプロテインC凝固制御系の存在と機能を明確にし、活性化プロテインC-プロテインC受容体経路、さらにはプロテインC凝固制御系の癌の増殖、浸潤・転移における役割について明らかにする上で、必要となる物品費等に使用する。
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