2020 Fiscal Year Research-status Report
ホモシステインによるα-シヌクレインのリン酸化,重合機構の解明
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20K16544
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
榎本 崇一 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (40569117)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホモシステイン / αシヌクレイン / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)は神経病理学的には中脳黒質のドパミン神経細胞の変性脱落が見られ、αシヌクレイン(αSyn)を主要な構成成分とするレビー小体が神経細胞質内に認められる。レビー小体自体に神経毒性はないが、αSynがリン酸化され重合していく過程で神経毒性を生じると考えられている。ホモシステイン(Hcy)は必須アミノ酸の1つであるメチオニンがシステインに代謝される過程で生成される中間代謝物のアミノ酸である。この代謝過程でビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が補酵素として働いており、これらのビタミン欠乏は高Hcy血症の原因となる。PD患者において血漿Hcy値が概して高値であることが示されており、PD患者の脳萎縮や脳室の拡大の程度は血漿Hcy値と相関するという報告や、20μmol/L以上の血清Hcy上昇はオッズ比 8.64倍でPDに寄与するという報告があり、Hcy自体の神経毒性が示唆されている。 本研究では、in vitroでテトラサイクリン(Tet)存在下で野生型αSynの発現が抑制されるTet-Off誘導系を導入した神経芽細胞腫細胞株(3D5細胞)を用いて実験を行った。 本年度は、まずTet-Off誘導前の3D5細胞にL-Hcyを0μM、1μM、10μM、100μM、1000μMに調整して培養液に添加し、ウェスタンブロット法で濃度依存的に総αSynの発現が増加することを確認した。次に高Hcy血症を呈するホモシスチン尿症の診断基準が血漿Hcy値 60μM以上であることから、培養液に添加するL-Hcyを0μM と100μMを選択し、リン酸化αSyn(PS129)の検討を行った。ウェスタンブロット法にて100μMで優位にPS129が増加していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は3D5細胞を用いたin vitroでの実験を行い、αSynのリン酸化およびオリゴマー形成に関する検討を概ね順調に進めることができている。ただ、葉酸欠乏あるいはビタミンB12不含培地を用いて3D5細胞を培養し、Tet-Off誘導してαSynを発現させて行う実験に遅れを生じている。 一方で、令和3年度で計画していた野生型マウスを用いたin vivoでの検討を令和2年度中に進めることができた。これは葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を含まない餌を投与して飼育し、その後ビタミン補充を行う群と行わない群に分けてさらに飼育したのち、脳を摘出して、αSynのリン酸化およびオリゴマー形成について検討を行うものである。脳組織の抽出液の作成を終えており、今後検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度中に行う計画であったin vitroでのαSynのリン酸化、オリゴマー形成に関する検討を引き続き行う。 また、令和3年度で計画している野生型マウスを用いたin vivoでの検討について、マウス脳の抽出液は作成済みであり、今後、マウス脳のαSynの発現量や、αSynのリン酸化およびオリゴマー形成の解析を行う。
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