2021 Fiscal Year Research-status Report
マウス脳虚血モデルにおける血管内皮透過性亢進機序の検討
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20K16585
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塚田 直己 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (80868563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳血管障害 / 二光子顕微鏡 / 血管透過性 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞、脳出血、脳血管性認知症の発症・病状悪化に、脳血管透過性の亢進の関与が示唆されているが、脳血管透過性が亢進するメカニズムは解明されたとは言えない。本研究の目的は、in vivo において血管透過性を評価することが出来る実験系を確立し、血管透過性亢進メカニズム・病態を解明することである。血管内皮細胞が蛍光標識されたTie2-GFPマウスを用い、中大脳動脈虚血再灌流モデルを使用する。中大脳動脈の可逆的閉塞手法である田村変法による中大脳動脈の一過性閉塞を行い、二光子顕微鏡を使用し頭窓法により観察する。血管透過性亢進の評価はrhodamine dextranの血管外(神経実質)への拡散を蛍光強度から定量化して行う。さらに田村変法による中大脳動脈の一過性閉塞とシャムオペ群の比較だけでなく、田村変法よりも広範囲に虚血を引き起こすスーチャー法による中大脳動脈の一過性閉塞やトロンビンの脳への直接注入などさまざまな脳血管内皮の透過性を亢進させると考えられる手法を試し、安定的、効率的に脳血管内皮透過性亢進を評価出来る実験系の確立を目指す。当初の研究計画に加えて2021年度は、作用機序はことなるが、トロンビンと同様に脳血管透過性を亢進させるHA2/5抗体の直接注入や永久閉塞モデルなどの検討を行い、安定的な実験系の確立に向けて知見を重ねた。 今後も脳血管透過性亢進メカニズムとその人為的コントロール法を解明することにより、血管透過性抑制による脳血管障害、脳血管性認知症の新規治療法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は当初の申請内容と比較し、多少の遅れを認める。その主な理由として、①当学内における動物飼育施設の大規模改修に伴い一定の飼育制限が生じたこと、②手技が複雑かつ時間を要するため実験数の蓄積に予想以上の時間を要したこと、③採用した脳定位固定皮質下注射モデルは新規手法であるため、最適条件が決定されるまでプロトコールの修正、改善に時間を要したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進については、実験プロトコルの最適化を企図したモデルの変更により、研究全体の進捗状況に若干の遅れはみられるものの、概ね順調と判断されることから、当初の研究申請内容に従い遂行する方針である。2022年(3年目)は、脳定位固定トロンビン皮質下注射による、脳血管透過性亢進モデルを用いて、より観察数を増やし、トロンビン曝露による影響について様々な観点からデータを総括する。例えば、RhoK阻害薬、MLCK阻害薬のほか、現在実臨床で用いられる様々な薬剤が、血管透過性の変化(増大の程度や、透過性亢進時間)、脳浮腫、出血性変化の有無・体積などに影響を与えるか検討を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度に当学動物飼育施設の大規模改修工事が行われ、当研究で用いる遺伝子改変マウスの飼育数を漸減した。また、受精卵の凍結保存、その後の個体復元作業を実験動物中央研究所に委託する必要性が生じた。その間、実験に用いる必要最低限のマウスは確保、維持されたが、一連の対応により動物(マウス)飼育費・動物購入費が減少した。実験物品の購入額については、研究計画が軽度の遅延を認めたことに加え、実験結果そのものは想定されたデータが順調に得られたため、試薬の使用が想定以上に抑制され、購入数および必要額が減少した。旅費については、研究責任者が勤務する大学組織(臨床・研究)のコロナ感染対策上の自主規制のため、学会への現地参加などが困難となったことから、実際に支出されることが無かった。 今後の使用計画として、2022年度については「研究調書にて当初申請した内容での研究遂行」を計画している。また、新型コロナ感染症による影響が不確定ではあるが学会発表も検討している。これらの事情から、2021年度の使用予定額について、2022年度に繰り越しのうえで研究を遂行する予定であり、記載の次年度使用額が生じるものである。
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