2020 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病のエネルギー産生経路上流の異常メカニズム解明と新規治療戦略の開発
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20K16592
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
今 智矢 弘前大学, 医学研究科, 助教 (00809709)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピルビン酸脱水素酵素 / パーキンソン病 / ミトコンドリア / レビー小体 / αシヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)では黒質の神経細胞脱落とレビー小体の出現が病理学的特徴であり、PDにおいては黒質は最も脆弱な組織と言える。PDにおいて黒質が脆弱な理由としてミトコンドリアでのエネルギー産生障害が考えられている。そこで、申請者らはミトコンドリアにおけるエネルギー産生の主要調節分子であるピルビン酸脱水素酵素に着目し、PD剖検脳の解析によりピルビン酸脱水素酵素がPDの病態に深く関与することを見出した。異常αシヌクレインはレビー小体の主要構成タンパクで、種々のタンパク質と結合し、種々の機能障害を引き起こす。本課題ではαシヌクレインとピルビン酸脱水素酵素の結合がエネルギー産生に与える影響を検討する。 今年度はPD剖検脳においてピルビン酸脱水素酵素複合体のうち最も主要な分子であるPyruvate Dehydrogenase Alpha 1(PDHA1)とαシヌクレインが共局在しているか確かめるために蛍光二重免疫染色を行った。結果、PDHA1はレビー小体において一部がαシヌクレインと共局在しているが、その多くが共局在しているわけではないことがわかった。このことからピルビン酸脱水素酵素のうちPDHA1以外の分子がαシヌクレインと相互作用をして黒質エネルギー産生障害を引き起こしている可能性も考えられた。そのため、次年度以降ではPDHA1以外のピルビン酸脱水素酵素複合体のうち次に主要な分子であるPyruvate dehydrogenase beta(PDHB)がαシヌクレインに与える影響を検討していくことにした。仮にPDHBがαシヌクレインと相互作用していなかった場合には、他のピルビン酸脱水素酵素(PDP、PDK)を用いて研究を進めていく。 また、PD類縁疾患である多系統萎縮症モデルマウスも用いて、ピルビン酸脱水素酵素がエネルギー産生に与える影響も検討していく予定でああり、多系統萎縮症モデルマウスの繁殖・維持をしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はPDモデルマウスを用いて実験を進める予定であったが、動物実験施設の空調故障等により、PDモデルマウスが死亡してしまった。そのため、当初の計画を変更してPD類縁疾患である多系統萎縮症モデルマウスの脳組織を用いることや、ピルビン酸脱水素酵素のうちPDHA1以外の分子の関与を検討することに計画を修正することに時間を要したため計画がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
PDHA1以外のピルビン酸脱水素酵素複合体のうち次に主要な分子であるPyruvate dehydrogenase beta(PDHB)がαシヌクレインに与える影響を検討していく。仮にPDHBがαシヌクレインと相互作用していなかった場合には、他のピルビン酸脱水素酵素(PDP、PDK)を用いて研究を進めていく。また、PD類縁疾患である多系統萎縮症モデルマウスの凍結脳幹組織を用いて、ピルビン酸脱水素酵素が黒質のエネルギー産生に与える影響を検討していく。
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Causes of Carryover |
抗体や試薬などの必要消耗品を購入したが、41,135円余った。この金額については繰り越して次年度以降の消耗品などに使用していきたい。
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