2023 Fiscal Year Annual Research Report
軸索に着目した筋萎縮性側索硬化症の運動ニューロン選択的変性に関わる新規因子の探索
Project/Area Number |
20K16593
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
光澤 志緒 東北大学, 医学系研究科, 医員 (60869618)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / TARDBP / TDP-43 / 人工多能性幹細胞(iPS細胞) / 運動ニューロン選択的変性 / PHOX2B |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の運動ニューロン選択的変性の原因解明を目標とした。申請者らは軸索異常からALSの神経変性が始まるDying back仮説に着目し、TARDBP変異ALS患者の人工多能性幹細胞 (iPS細胞)を樹立し、運動ニューロン(iMN)を分化誘導すると、変異iMNの突起伸長が抑制されることを確認した。さらに、軸索分画のRNAシークエンス (RNA-Seq)を行い、変異軸索で発現が減少し、神経突起伸長に関与するPHOX2Bを見出した。健常者由来iPS細胞にALS患者TARDBP変異を導入したiPS細胞においても同様の所見が得られ、背景遺伝子によらない、TARDBP変異による変化と考えられた。また、PHOX2B発現を抑制すると、健常者iMNやゼブラフィッシュにおいて神経突起長や脊髄軸索長が低下し、さらに運動機能も低下した。以上から、PHOX2BはTARDBP変異による神経突起伸長抑制に関わることが示された。ALSで発症後長期に保たれる動眼神経や自律神経においてPHOX2B発現が高いことから、変異運動ニューロンの選択的変性に関わる可能性が考えられた。上記の新しい知見をStem Cell Reportsに報告した(Mitsuzawa, et al. Stem Cell Reports 2021)。 さらなる研究として、GFPタグ付きPHOX2Bを使用した過剰発現実験を試みたが、内因性PHOX2B発現が減少し、iMN内ではPHOX2Bは厳格な制御下にあることが示唆された。外的介入によらない手法を用いたPHOX2Bの下流標的の特定が必要と考え、PHOX2Bが豊富かつALSで保たれやすい自律神経と、運動ニューロンのRNA発現比較を行い、PHOX2Bの下流標的遺伝子候補を絞り込んだ。今後、iMNでの候補遺伝子のタンパク発現量や、介入実験による表現型の評価を続ける。
|
Remarks |
東北大学プレスリリース:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい病態関連候補因子を発見 -患者由来iPS細胞を用いた運動ニューロン選択的変性のメカニズム解明へ期待-
|