2021 Fiscal Year Research-status Report
気分障害患者のライフイベントに関連した心理的苦悩症状のための尺度開発
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20K16616
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 愛子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (20831522)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心理的苦悩症状 / ライフイベント / 気分障害 / 評価尺度作成 |
Outline of Annual Research Achievements |
心的外傷後ストレス障害の診断基準に満たない、より日常的に起こりうる出来事に関連した心理的苦悩において、その評価に特化した評価尺度を作成することを目的に、「気分障害患者のライフイベントに関連した心理的苦悩症状のための尺度開発」を研究課題としている。 令和2年度は、「研究Ⅰ.気分障害患者における心理的苦悩症状の臨床的特徴に関する質的研究」により、心理的苦悩症状(Event-Related Psychological Distress:ERPD)の臨床的特徴を抽出し、評価尺度の原案を作成した。続いて、「研究Ⅱ.心理的苦悩症状の評価尺度開発研究」において、「研究Ⅰ」で作成した原案から、心理的苦悩症状を評価するために必要十分な項目を選定し、一般被験者を対象に尺度の妥当性を検証し、評価尺度「ERPD-24」を作成した。 令和3年度は、作成した評価尺度の気分障害患者に対しての実用性の評価と、症状の重症度を評価する方法を定めることを目的とした研究を開始した。同尺度を健常者と気分障害患者(双極性障害・うつ病)に対して使用し、気分障害患者と健常者、また気分の状態ごとの点数と内容を検討する。また、気分障害患者における感度・特異度や、同尺度の点数と他の評価尺度との関連性を評価・検討する。現在は被験者に対して使用し、データを蓄積している段階である。 心的外傷後ストレス障害の診断基準に満たない、より日常的に起こりうる出来事に関連した心理的苦悩において、その評価に特化した評価尺度が作成されたことで、より正確な症状評価が可能となったと考えているが、点数と重症度との関連を明確にすることで、より実臨床に即した、使用しやすい尺度に出来るものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、気分障害患者の過去の出来事に対する心理的苦悩症状の臨床的特徴を明確化するため、心理的苦悩症状(ERPD)を持つ、20-64歳の気分障害患者(双極性障害・うつ病)を対象に研究Ⅰを実施した。被験者より心理的苦悩症状を来すライフイベントの内容や想起する頻度、その時の感情、身体反応などを半構造化面接にて聴取し、得られた質的データから臨床的特徴を抽出し、評価尺度の原案を作成した。 続いて、研究Ⅱを開始した。20-64歳の一般被験者に対して、研究Ⅰで作成した評価尺度の原案、及び、先行研究でも使用してきた既存のIES-R(改訂出来事インパクト尺度)、QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)での評価を同時に行い、評価尺度の項目選定のための探索的因子分析を行い、項目を選定した。また、原案とIES-Rの相関と、性別・出来事発生からの期間・QIDS-Jスコアを調整した偏相関分析を行い、妥当性を検証した。 当初の計画では気分障害患者も被験者に含めていたが、評価尺度作成に当たっては一般被験者のみを対象とし、気分障害患者に対しては評価尺度作成後に改めて調査を行う方針に変更した。 令和3年度は、作成した評価尺度の気分障害患者に対しての実用性の評価と、症状の重症度を評価する方法を定めるための研究を開始した。 同尺度を20-69歳の健常者と気分障害患者(双極性障害・うつ病)に使用し、気分障害患者と健常者、また気分の状態ごとの点数と内容を検討する。また、気分障害患者における感度・特異度や、同尺度の点数と他の評価尺度(簡易抑うつ症状尺度、ヤング躁病評価尺度、新版STAI、リーボヴィッツ社交不安尺度日本語版、自閉症スペクトラム指数、不安・抑うつ発作、改訂出来事インパクト尺度)との関連性を評価・検討する。2021年2月に千葉大学医学研究院倫理審委員会で承認を受け、現在はデータを蓄積している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、「研究Ⅱ」において一般被験者を対象に評価尺度を作成した。 令和3年度は、作成した評価尺度を20-69歳の健常被験者・うつ病・双極性障害患者に対して実施することで、気分障害患者における実用性を検証していく研究を開始した。本研究は現在、被験者に使用しデータを蓄積している段階であり、令和4年度は本研究のデータ収集を終了し、気分障害患者における実用性の検証の他、感度・特異度なども検証したいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、評価尺度作成にあたり、うつ病・双極性障害患者を対象とした試験も開始しているが、実施途中の段階であり、被験者への謝金に要した金額が少なかったため。 令和4年度にも現在の研究を継続していくため、次年度使用を計画している。
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Research Products
(1 results)