2020 Fiscal Year Research-status Report
妊娠期の抗精神病薬暴露が出生後の仔マウスへ与える影響
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20K16628
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
吉野 祐太 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (10646243)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗精神病薬 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
B6マウスを用い、受精開始から出産までハロペリドール(HAL)を投与し、出生した仔を対象に研究を行った。胎生期HAL投与による中枢神経系での遺伝子発現の変化を網羅的に把握するため、出生8週齢のマウス海馬RNAをRNA-seqに提出した(HAL vs NS, n = 6 each)。平均値を比較した結果、HAL投与群において、1370遺伝子の有意な発現増加、1260遺伝子の有意なmRNA発現の減少を確認した。1.3倍以上の上昇を認める562遺伝子を対象にGO解析を行った結果、神経発生及びシナプス機能に関連することがわかった。GWAS研究からmiR-137-3pが統合失調症の発症に関与していること、また、神経発生に影響を与えていることより、仔でmiR-137-3pの発現を調べたところ、HAL群では有意に発現が低下していることを確認した。miRNAは転写を抑制することから、miR-137-3pが制御する遺伝子かつRNA-seqの結果にてHALで上昇している遺伝子をmiRWalk 2.0を用いて予測したところ4遺伝子(Htr2c, Nr3c1, Gsk3b, Nrxn1)が候補として挙がった。4遺伝子の発現をqPCR法にて確認したところ、Nr3c1遺伝子mRNAがHAL群で有意に上昇しておりRNA-seqの結果を再現することができた。 次にmiR-137-3pとNr3c1の関係を実験的に実証するため、マウスニューロブラストーマであるNeru2a細胞にmiR-137-3p mimic oligoを導入し過剰発現させたところ、Nr3c1遺伝子発現も減少していることをqPCR法にて確認した。mimic群では、有意に発現が低下していることからも、HALは母マウスを通じて仔へ影響を与えること、少なくとも、miR-137-3pの発現を減少させることで、Nr3c1遺伝子の発現を上昇させることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請の際に予定していた研究はほぼ終了しており、現在論文を作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、この変化が再現できるかを同じモデルを作成し、同様にRNA-seqに提出する予定としている。また、母マウスへ抗精神病薬を投与した結果、生まれた仔の海馬においてアポトーシスによる神経変性が確認されている。そのため、TUNEL法などを利用しアポトーシスに注目した組織学的な解析を行う予定としている。
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Causes of Carryover |
必要物品購入後、費用が余ったため。次年度の物品購入の際に使用する予定である。
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