2022 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の作業記憶ネットワーク機能障害に関わる錐体ニューロン投射タイプの同定
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20K16644
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坪本 真 金沢大学, 附属病院, 助教 (40835906)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SATB2 / FEZF2 / TBR1 / FOXP2 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症患者と対照者のペア20組の死後脳それぞれの背外側前頭前野(DLPFC)および一次視覚野(V1)の灰白質から2021年度に抽出したRNAを用いた。症例の各領域から得られたRNAサンプルを用いて、すでに発現定量したFEZF2およびSATB2に加えTBR1およびFOXP2のmRNAの発現を定量した結果、TBR1はDLPFCにおいて1.6%、V1では20%増加していることが判明した。疾患、性別を固定効果、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RNA integrity number(RIN)を共変数とした共分散分析の結果、疾患の影響はDLPFC(F1,33=0.02, P=0.89)、V1 (F1,33=0.29, P=0.60)ともに有意性は検出されなかった。また共分散分析における性別、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RINの影響を調べたところ、DLPFCでは性別(F1,33=4.3, P=0.046)およびRIN(F1,33=13.7, P=0.001)、V1ではRIN(F1,33=68.5, P<0.001)の有意な影響が検出された。また、統合失調症のDLPFC、V1それぞれにおいてTBR1の発現に対する死亡時の抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンおよび抗てんかん薬の使用や死因としての自殺の有意な影響は認められなかった。一方、FOXP2は、DLPFCにおいて5.2%、V1では38%増加していることが判明した。FOXP2に関しては現在統計解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、視覚作業記憶ネットワークを構成する大脳皮質における錐体ニューロンマーカー遺伝子SATB2、FEZF2、TBR1、FOXP2の発現を20組の統合失調症と健常対照者のペアにおいて計測することを目的としている。2020年度、2021年度にこれらの症例の脳サンプルが存在する米国ピッツバーグ大学精神科に出張して灰白質のRNA抽出用のサンプルを準備する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により渡航できなかった。それによるサンプル準備の遅れが影響し、発現定量および解析にも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にはこれまで定量したDLPFC及びV1におけるSATB2、FEZF2、TBR1、FOXP2の各mRNA発現レベルデータを、疾患の有無を症例間要因、領域の違いを症例内要因とし、性別、年齢、死後経過時間、RNA integrity number、脳組織pHを共変数とする混合モデルで解析する。これによる錐体ニューロンに特異的に発現する転写因子の統合失調症のDLPFCおよびV1における発現変化を統計的に評価し、視覚作業記憶ネットワークにおける錐体ニューロンの健常者での発現パターンと、統合失調症により変化している錐体ニューロンタイプを同定する。
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Causes of Carryover |
2022年度は20組の同性別で年齢および死後経過時間が出来る限り近い統合失調症と健常対照者のペアのそれぞれの症例の複数の大脳皮質領域から得たRNAサンプルを用いてPCRを行い、2種の錐体ニューロンマーカー遺伝子発現を定量した。2022年度にはRNAの抽出やcDNAの合成に必要な消耗品と解析用のパソコンの購入費用として使用した。計画初年度から新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延に伴い、予定していた米国ピッツバーグ大学への渡航が叶わず、それによる実験、解析の遅れが続いている。2023年度の使用額は、解析用のソフトの購入や論文の投稿費用に充てる予定である。
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