2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン・メチル化障害による恐怖記憶の消去障害の機序解明とPTSD治療法の開発
Project/Area Number |
20K16649
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片岡 努 広島大学, 医系科学研究科(医), 専門研究員 (10868805)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PTSD / 動物モデル / エピジェネティクス / 新規治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
PTSDモデルであるsingle prolonged stress(SPS)負荷ラットにおける恐怖記憶の消去障害に関するBDNF低下の機序を解明する目的で、まずBDNFのmRNA発現を測定した。SPS負荷1週間後の恐怖条件付け直前の時点ではBDNF mRNAの発現に変化を認めず、また恐怖条件付け後24時間時点でもBDNF mRNA発現に変化を認めなかった。しかし、恐怖記憶消去訓練後2時間の時点でのBDNF mRNA発現はSPS負荷ラットで有意に減少しており、SPS負荷ラットでは消去訓練後に誘導されるBDNFmRNA発現が抑制されている可能性が示唆された。また、BDNFを含む記憶関連遺伝子の発現抑制の機序としてヒストンメチル化を想定し、ヒストンH3の9番目のリシン(H3K9)と27番目のリシン(H3K27)のジメチル化について全ヒストンH3を対象に測定したが、SPS負荷週間後の恐怖条件付け直前の時点や恐怖条件付け後24時間時点でのH3K9やH3K27ジメチル化に有意な差は認めなかった。しかしSPS負荷ラットにおいて恐怖記憶消去訓練後のBDNF発現低下の改善を目的として、訓練の16時間前にヒストンメチル化酵素の阻害薬であるBIX01294を投与することによって訓練後のBDNF発現低下の回復や恐怖記憶の消去障害の改善が認められた。その機序として海馬におけるH3K9メチル化変化を介したBDNF遺伝子の発現調節の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPS負荷ラットで起こる消去訓練後のBDNFの発現低下はヒストンメチル化阻害薬のBIX01294によって回復した。また恐怖条件付け実験において訓練前のBIX01294投与により恐怖記憶の消去が促進した。これにより、SPS負荷ラットにおけるBDNF発現低下にヒストンメチル化が寄与し、その阻害薬がPTSDの新規治療法となり得る可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
全ヒストンH3K9及びH3K27のジメチル化に有意な変化を認めなかったが、個別の遺伝子上流の解析は行えていない。さらにこれらのジメチル化を担うヒストンメチル化酵素G9aの選択的阻害薬であるBIX01294の投与により、訓練後のBDNF発現低下の回復や恐怖記憶消去障害の改善を認めた。今後はBDNF遺伝子プロモーター領域のヒストンのジメチル化の評価を行い、SPS負荷ラットにおけるBDNF発現低下の解明やBIX01294による治療効果の機序を検討する。
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