2022 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症における意思決定や行動選択の柔軟性低下について
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20K16654
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤野 純也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (90783340)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
心理的・社会的葛藤場面において、自閉スペクトラム症(ASD)の意思決定/行動選択パターンの強みや困難さのメカニズムを、社会神経科学・ 神経経済学的手法を用いることで、多面的に検証した。本年度は、定型発達群、ASD群を対象に、利他的な協力行動の個人差に関する解析を行なった。分配に関する課題や改変した最後通牒ゲームの得点は、両群で有意差を認めなかった。定型発達群とASD群において、利他的協力行動の個人差と共感性に関する機能が関連していたが、その関係性が両群で一部異なっていた。共感性をさらに深く検証していくことが、ASDの社会的行動のメカニズムを理解する上で重要であることが示唆された。また、定型発達群を対象に、心の理論に関するfMRI課題中の脳活動と、認知的柔軟性の関連に関して調査した。心の理論に関する処理を行なっている間、中前頭回、下前頭回、扁桃体、楔前部、側頭頭頂接合部を中心とした幅広い脳領域に脳活動を認めた。この中で、特に、右中前頭回と側頭頭頂接合部の脳活動のレベルが、認知的柔軟性の個人差と関連し、心の理論と認知的柔軟性の共通した神経基盤となっている可能性が示唆された。これらの結果をもとに、ASDの意思決定パターンにおける強みや困難さのメカニズムに関する知見を多面的に検証し、発達障害を専門とする他職種での議論を通じて、同疾患群の心理社会的介入法・新規治療法開発に関する考察を深めていきたいと考えている。
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