2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the molecular mechanism of D-serine - AMPA receptor interaction and its application to the development of a treatment for schizophrenia
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20K16655
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
海野 真一 昭和大学, 医学部, ポストドクター (00735855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統合失調症 / D-セリン / 神経薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルシウム透過型AMPA(CaP-AMPA)受容体―D-セリン相互作用の分子細胞メカニズムを明らかにする目的で、本相互作用がニューロンとグリアの双方の活動性から影響を受けることに注目し、D-セリンの局在を解析した。CaP-AMPA受容体とともに、D-セリンの細胞外濃度を制御するGABA介在ニューロンとの関係を知るため、GABAニューロンに特異的に発現するGABA合成酵素の、glutamate decarboxylase(GAD67)のコンディショナルノックアウトマウスの脳からRNAを抽出し、RT-PCR法にてGAD67及びD-セリン合成酵素のserine racemase(SRR)のmRNA発現量を調べた。その結果GAD67のmRNA発現量が減少することが確認され、SRRのmRNA発現量は上昇した。 抗D-セリン抗体の特異性の検証を行うためにD-セリンとグルタルアルデヒド結合体を特異的に認識する抗体を用いて組織凍結切片の免疫染色法を確立した。グルタルアルデヒド(0.25%)を含むパラフォルムアルデヒド(4%)を用いて灌流固定したSRRKOマウスの脳より作製した脳切片で、抗D-セリン抗体を使って、組織中D-セリンの免疫染色を行った。野生型マウスの大脳皮質、海馬等でD-セリン様免疫反応が認められ、HPLCによる組織中D-セリン濃度の定量結果と矛盾しなかった。SRRKOマウスにおいては、D-セリン様免疫反応の低下傾向が見られたが、動物数が少なく、脳切片の状態が良くないため、本年度に、SRRKOマウスを凍結受精卵から個体化し、灌流固定を行った。 また、本研究から得られた、D-セリンの局在・代謝・機能に関する基礎的な所見、精神病の病態への関与および治療効果に関する所見の一部は、NeuroPsychopharmacotherapyと題する電子書籍に掲載された2つの論文において議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に再実験を行う予定あった凍結受精卵で保存しているSRRKOマウスを個体化する作業を、高度な専門技術が必要なため外部施設に委託して行った。作出された個体達に灌流固定を行い固定した脳サンプルを作成したのち、整理して冷凍保存した。次年度(2022年度)に保存してあるサンプルの免疫染色を行うため、動物種の違いはあるが他のサンプルにて神経細胞のマーカーであるNeuNやグリア細胞のマーカーであるIba1、GFAP、MBPとs100betaの蛍光免疫染色法を確立した。次年度はこの技術を用いて蛍光免疫染色を行い、結果の解析を行うい、結果をまとめる予定である。一方、CaP-AMPA受容体と密接に関係するIP3受容体のII型サブタイプをノックアウトしたマウスにおけるD-セリン動態の変化についての実験データの解析が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
抗D-セリン抗体を使った、脳におけるD-セリンを含有する細胞や細胞内構造の検討を継続する。本抗体の特異性を、2021年度に凍結受精卵からの個体化した、D-セリン合成能をもつセリンラセマーゼ(SRR)を欠損したマウスより作製した脳切片においてD-セリンの免疫反応の局在を明らかにし、グリシンやL-セリンに対する免疫反応と比較する。D-セリン様免疫反応の解析は、光学顕微鏡だけでなく電子顕微鏡によっても進める。また、2013年に我々の研究グループが初めて報告した、カルシウム透過型AMPA受容体による細胞外D-セリン濃度の調節の分子細胞機構を明らかにする目的で、細胞内カルシウム動態で重要な役割を果たす分子として知られ、D-セリンとの相互作用が未検討である、II型IP3受容体との関係を調べる研究を継続する。すなわち、IP3RIIKOマウスの内側前頭葉皮質において、マイクロダイアリシス法を用いて細胞外D-セリン濃度への影響を検討した実験のデータ解析をさらに進める。すなわち、細胞外D-セリンの基礎的濃度、およびベラトリジンによる脱分極、テトロドトキシンによる神経伝導遮断等の効果を、対照群のマウスと比較する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの蔓延して通常業務に支障が生じ、予定の進行が遅れたため。 本年度行う予定であった蛍光免疫染色用試薬を来年度に購入する。
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