2020 Fiscal Year Research-status Report
近赤外線スペクトロスコピーを用いた精神疾患の安静時機能的結合の診断的特徴の研究
Project/Area Number |
20K16665
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 英輔 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00717035)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近赤外線スペクトロスコピー / 安静時機能的結合 / 大うつ病性障害 / 統合失調症 / 偏相関分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy; NIRS)による安静時機能的結合(resting-state functional connectivity; RSFC)の測定法を用い、うつ病、双極性障害、統合失調症の脳機能の診断特異的特徴を明らかにし、すでに鑑別診断補助のバイオマーカーとして臨床応用されている語流暢性課題を用いたNIRSによる精神疾患の鑑別診断補助技術と組み合わせることで、診断精度を高めることである。 今年度は、頭部全周性に89Chで大脳皮質の血液酸素化信号を測定できるNIRS装置を組み、過去に測定した健常者78名と、大うつ病性障害患者34名の8分間の安静時脳活動から計算したRSFCを比較した。結果、うつ病群では、左の前頭前皮質背外側部―頭頂葉間のRSFCが健常群と比べて低下し、右の前頭前皮質眼窩面と前頭前皮質腹外側部間のRSFCが健常者と比べて亢進していることが分かった。さらに、うつ病群では左の前頭前皮質背外側部―頭頂葉間のRSFCとうつ病の重症度と抗精神病薬の内服量と負に相関し、生活機能と正に相関することが分かり、認知制御ネットワークのRSFCが、うつ病患者において状態依存的に変調をきたすことが示唆された。 これらの結果をAbnormality of resting-state functional connectivity in major depressive disorder: A study with whole-head near-infrared spectroscopyというタイトルの論文にまとめ、Frontiers in Psychiatryという雑誌に投稿し受理された(現在出版準備中)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は下記のように3つの段階を規定していた。 解析の第一段階では、各疾患群のデータをさらに蓄積した上で、健常者のRSFCとこれらの3つの精神疾患のRSFCを比較し、脳領域ペアごとの単変量解析により、それぞれの精神疾患を特徴づけるRSFCのパターン抽出を試みる。 解析の第二段階では、RSFCの特徴と、語流暢性課題中の脳活動のパターンを組み合わせることで、過去にすでに検討されている、語流暢性課題のみを用いた判別方法よりも、性能が向上するかどうか検討を行う。 解析の第三段階では、上記の結果が多くの施設で普及している、前頭側頭部の脳血流のみを測定するNIRS装置を用いたRSFCの測定でも上記の成果が応用可能かを検討する。 令和2年度の進捗は、第一段階のうつ病におけるRSFCの特徴を抽出したところまでであり、第二、第三段階に進むことができていないため、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データが集まりつつある統合失調症群と健常群のRSFCを比較して、脳領域ペアごとの単変量解析により、それぞれの精神疾患を特徴づけるRSFCのパターン抽出を試みる。さらに、統合失調症群において、RSFCの変化が症状の重症度や服薬、知能と関連するかも検討し、縦断的に測定している一部患者のデータを用い、第一段階で見いだされた特徴が疾患のstateを反映するものか、traitを反映するものかを確認していきたい。これらの検討が済み論文化ができたら、RSFCの特徴と、語流暢性課題中の脳活動のパターンを組み合わせることで、過去にすでに検討されている、語流暢性課題のみを用いた判別方法よりも、診断判別性能が向上するかどうか検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により国内学会への実地での参加や、海外学会への参加が全く行えなくなり、支出減ったため科研費の残金が生じた。コロナ禍が明けた際に、学会参加を計画していく予定である。
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