2020 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の認知機能障害とパルブアルブミンニューロンにおけるKCNS3発現低下
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20K16668
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川端 梨加 金沢大学, 附属病院, 研究員 (70726207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Kcnb1 / パルブアルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子操作にてKCNS3遺伝子の蛋白質コードエクソンの上流にバクテリア由来のネオマイシン耐性遺伝子を挿入しKCNS3遺伝子の活性を抑制したKcns3-neoマウスを用いて、パルブアルブミン陽性ニューロン(PVニューロン)における遺伝子発現の変化を調べた。このマウス系統では、既にin situ hybridization法によってPVニューロンにおけるKcns3 mRNAの発現が、対立遺伝子の片方または両方が抑制されているヘテロ型およびホモ型において、同系統の野生型に比べ、それぞれ21%および45-58%低下していることが確かめられている。この系統の野生型(n=5)、ヘテロ型(n=5)、ホモ型(n=5)のそれぞれのマウスより、前頭部大脳皮質組織を切り出し、RNAを抽出した。このサンプルを用いてKcns3およびPVの発現をreal-time PCRで計測した。各mRNAの発現レベルは同時に増幅した内部標準遺伝子(cyclophilin, beta-actin, GAPDH)の発現レベルに標準化して求めた。その結果Kcns3 mRNAの発現は、野生型に比べヘテロ型で26%、ホモ型で46%低下しておりin situ hybridization法の結果と同様であった。一方で、PV mRNAの発現レベルは、野生が屋3遺伝子型の間で有意な差は認められなかった(F2,12 =0.96, P=0.41)。またこれらのマウスの前頭葉の切片を用いPVニューロンにおけるKcns3と結合しカリウムチャネルを構成するKcnb1の発現を2重標識in situ hybridization法で評価した。その結果Kcnb1 mRNAの発現にも遺伝子型間で有意な差は認められなかった(F2,12=0.15, P=0.86)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kcns3の遺伝子を不活化したマウスの大脳皮質において、遺伝子型の異なるマウスの大脳皮質サンプルを準備できた。これを用いて、パルブアルブミンニューロンの活動性の指標であるパルブアルブミンおよびKcns3と結合してカリウムチャネルを形成するKcnb1の発現の評価を行い、予定している遺伝子発現はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Kcns3の発現はマウス大脳皮質では90%以上のPVニューロンに認められ、Kcns3を発現するニューロンの60-74%がPVを発現する。これは、PVニューロン以外にもKcns3を発現するニューロンの存在を意味する。そこで、PVニューロンのみに遺伝子組み換え酵素遺伝子Creを発現するマウスとKcns3遺伝子の蛋白質コード遺伝子がCreが認識するloxP配列で挟まれたマウスを掛け合わせ、PVニューロンのみでKcns3遺伝子が不活化されたマウスを用いて、本年度と同様にKcns3を始め、PVやKcnb1の発現を評価しつつ、行動実験を行い認知機能を評価する。
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Causes of Carryover |
実験に必要な物品を購入し研究を進めたが、少額の未使用金が生じた。
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