2020 Fiscal Year Research-status Report
独居という生活環境が軽度認知障害患者の脳機能に及ぼす経時的影響について
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20K16669
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末廣 聖 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30866611)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 軽度認知障害 / 独居 / 高齢者 / 認知機能 / 脳機能 / ADL |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、独居で生活している認知症者の数が増加している。一方で、軽度認知障害者では独居であることが認知症への進行を早める可能性があることがわかってきている。しかし、独居という生活環境がどのような認知機能をより増悪させやすく、神経画像には影響を及ぼしうるのか、ということはわかっていない。 本研究では独居の軽度認知障害者を経時的に観察し、同居者がいる場合と比べて認知機能や神経画像などの脳機能がどのように変化するか、そして独居の生活環境の中でいかなる要因が認知障害の増悪に寄与しているかを解明することが目的である。 同居家族のいる軽度認知障害者、独居をしている軽度認知障害者それぞれについて、前者41例、後者16例をリクルートし、ベースラインの認知機能、日常生活機能、神経画像のデータを収集した。また、14例については作業療法士による詳細な自宅での日常生活機能の評価も行うことができた。 独居である軽度認知障害者は、同居者のいる軽度認知障害者と比較して、横断的な検討の上では、認知機能、精神症状全体には有意な差は見られなかった。一方で、妄想に関しては、独居者の方が強い傾向が認められた。また、自宅での日常生活機能の評価においては、評価尺度上では両群に有意な差を認めなかったものの、作業療法士による詳細な検討を行ったところ、独居者において、食事の用意や清潔の維持などの点について、評価尺度のスコア上には現れない問題が多いことがわかった。 これまでの成果で横断的に比較しても同居者の有無で症状や日常生活に違いがある可能性が示唆された。今後は縦断的な比較を行うことで、さらに生活環境が及ぼす影響について有意義な知見が得られる可能性が考えられ、引き続き研究を継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計100例のリクルートを予定していたが、COVID-19流行により受診を控える傾向が強かったため、リクルートがうまく進まなかった。また、当初は自宅訪問による日常生活機能の評価を行う予定であったが、同様の理由で施行が困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19流行の影響は当分改善される見込みがないため、自宅訪問による日常生活機能の評価をとりやめ、家族や介護者に自宅の様子を写真撮影してもらい、それを基に評価を行う方法へと変更する方針としている。 また目標症例数に達していない点については21年度の前半までリクルート期間を延長することで対応する方針である。 そして今回リクルートした症例も含めて1年間の観察を行い、独居という生活環境が認知機能、日常生活機能、神経画像を含めた脳機能にいかに影響するか、検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の予定に変更があったため
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