2022 Fiscal Year Research-status Report
Epigenetic changes in the central nervous system and peripheral blood of offspring rats exposed to VPA during fetal life.
Project/Area Number |
20K16678
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
金城 智也 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80750364)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バルプロ酸 / PBMC / ADHD / acetylation / コアヒストンタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウム(VPA)を妊娠中服薬していた妊婦から生まれた児は発達遅延とともに注意欠陥多動性障害(ADHD)リスクの上昇が指摘されている。本研究ではその診断補助の基礎研究として、動物実験において末梢血と中枢神経のエピジェネティクス学的関係性の解明を目的とした。妊娠12.5日目のラットにVPA(200mg/kg)を連日腹腔内投与し、生後4週齢及び20週齢の仔ラットを研究対象とした。行動実験は4週齢のみ行い、血液由来サンプル(全血 or PBMC)と脳由来サンプル(灌流固定した脳組織 or 未固定の海馬)を回収した。20週齢のラットに関しては、灌流固定した脳組織のみを使用した。 初めに、回収した全血及び海馬由来のRNAサンプルを用いてRNA-seq解析を行った。その結果、血液由来RNAサンプルに関してはヘモグロビン関連遺伝子の影響はあったものの、個体差は比較的少なく、重要な遺伝子の発現変動が観察された。しかしながら、海馬由来RNAサンプルに関しては、個体差が激しく、根本的な問題が示唆された。これは脳組織から海馬を分離する際に生じた刺激が影響しているのではないかと推測された。 次に、ヒストン修飾を評価するために、脳組織では免疫蛍光組織染色を行い、PBMCではコアヒストンタンパク質を精製後、ウエスタンブロッティングを行った。それぞれの実験系において、アセチル化ヒストンに対する抗体を用いてヒストンテールのアセチル化を観察した。その結果、胎生期VPA曝露群は、中枢神経と末梢血の両方において、低アセチル化状態であることが観察された。20週齢ラットに関しては、4週齢と同様の傾向であったが、全体的に高アセチル化になっていた。 令和4年度の主な実績としては、末梢血において、ヒストン修飾の定量的検出に成功した。さらに行動試験も追加し、胎生期VPA曝露群は多動であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒストン修飾に関する実験が難航していた原因が抗体の保存性によるものであることが判明し、その改善策を見出すことができた為、研究をスムーズに進行するに至った。さらに、未固定の脳組織を用いた遺伝子発現解析やヒストン修飾解析は、個体間のバラツキが許容不可能なレベルであったことから、解剖時における根本的な問題が解決されない限り難しいと判断し、灌流固定した脳組織あるいは血液由来のサンプル(全血 or PBMC)に重点を置き研究を行った結果、研究をおおむね順調に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
多数のヒストン修飾関連の抗体を用いて、特異的なヒストン修飾解析を脳組織を用いた免疫蛍光組織染色で実施し、異なる変化を示すヒストン修飾部位を見出すことができた場合、PBMCを用いたウエスタンブロットも実施する。 ラットの行動解析の結果、全血由来RNA-seqの解析結果とアセチル化解析の結果を照らし合わせて、論文としてまとめる予定。
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Causes of Carryover |
理由:論文校閲やリバイス等の予算確保。
使用計画:論文校閲及びリバイスの必要試薬に使用する予定。
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