2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K16690
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
六本木 麗子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (80719857)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線影響 / 認知機能障害 / 神経細胞 / シナプス / ドレブリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は放射線治療による副作用である認知機能低下についてシナプスたんぱく質レベルからアプローチしてそのメカニズムを解明することである。 2022年度ではマウス個体を用いた放射線影響について検討した。マウスの発達過程として、胎児、幼若期、成熟期の三つに分けて、X線と炭素線をそれぞれ1Gyの線量で照射し、行動バッッテリーテストを行った。その結果、自発運動量や不安様行動、痛覚についての異常が見られなかった。一方で、作業記憶を評価するバーンズ迷路では、X線と炭素線の両方において照射群では有意に認知機能障害が認められた。面白いことにオスよりもメスのほうが顕著に表れることが分かった。行動実験後は脳の海馬を摘出したサンプルを用いてシナプスタンパク質の定量を測定した。照射後のマウス脳サンプルでもいくつかのシナプス関連タンパク質の変化がみられた。中でも認知機能に関連しているドレブリンが照射直後から顕著に減少または増加と激しく変動している。ウェスタンブロッティング法では結果が一定ではないため、さらなる実験数を増やして検討している。また、共同研究でドレブリンELISAキットの開発が進み、これを用いて放射線の影響を評価している。放射線影響による認知機能障害の一因がシナプス関連タンパク質の変動であることが分かった。今後、放射線影響による認知機能障害の副作用をタンパク質発現の制御による改善することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により研究物品や試薬の納期が遅れていたが、後半では徐々に通常通りになったため、遅れている動物の行動実験や抗体による免疫組織化学を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス個体を用いた放射線影響の検討について、より信憑性の高いデータを得るために実験数を増やす必要がある。また、タンパク質発現制御によって放射線照射の副作用である認知機能障害を改善できるかどうか薬物作用の検討をしていく。いくつかの薬物を候補に挙げ、照射前にマウス個体に投与し、放射線照射による認知機能の低下を抑制できるかどうか検討する。
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Causes of Carryover |
本研究の開始からコロナ禍になり、研究進捗に影響が出ている。今年度の後半から研究するための物品や試薬が入り、遅れを取り戻そうとしているがまだ令和4年度の計画が残っている。次年度における経費の使用計画として主に下記の3つとする。 ①残っている計画の実験を遂行するために消耗品や試薬の購入をする。 ②本研究課題の成果をまとめて論文にするための投稿費用。 ③これまで現地開催されなかった国際学会に出席して発表を行うための旅費。
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Research Products
(2 results)