2020 Fiscal Year Research-status Report
マイトファジーを標的にした膵がん放射線増感方法の新規開発
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20K16771
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
澤田 将史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10824948)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / 放射線感受性 / マイトファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌細胞において、マイトファジーを阻害し放射線照射を行うことで、ミトコンドリア由来の活性酸素種が増加し、放射線増感効果が得られるを検証すべく以下の実験を行った。 オートファジー阻害剤であるクロロキン(CQ)とマイトファジー阻害剤であるMdivi-1による放射線増感効果をcolony形成法により検証した。CQあるいはMdivi-10を0、10、20、50uMの濃度で24あるいは72時間暴露させ、培地交換直後に0、2、5、10Gyの照射を行った。細胞を播種してから2から3週間で固定し、コロニー数をカウントした。いずれの条件でも明らかな増感効果を示すことはできなかった。 次に薬剤投与によりマイトファジーを阻害/誘導させることが出来ているか確認するため、Mtphagy DyeとLyso Dyeによる染色を行った。マイトファジーの阻害剤としてCQ 50uM、Mdivi-1 50uM、3-Methyladenine (3MA) 20uM、促進剤としてCCCP 50uM、Mitochonic Acid 5 (MA5) 50uM、低酸素培養キットを用いた酸素0%状態(低酸素)に24時間暴露させ、蛍光顕微鏡にて観察した。CCCP、低酸素ではコントロールと比較し、Mtphagy Dyeによる蛍光増強、Lyso Dyeとの共局在を認め、マイトファジーの誘導が示唆された。 またwestern blot法にてLC3-II抗体を用いて各薬剤のマイトファジー阻害・誘導を再検した。CCCP、低酸素にてマイトファジーの亢進が示唆された。 膵癌細胞にCCCP 50uMの濃度で24時間暴露させ、培地交換直後に0あるいは10Gyの照射を行った。細胞を播種してから3週間で固定し、コロニー数をカウントした。CCCPによる放射線増感効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種のマイトファジー阻害剤単体で種々の条件でコロニー形成法を行ったが、明らかな増感効果を示すことはできなかった。初期はマイトファジーの検出手法としてMitoTrackerによるミトコンドリアの形態変化をみていたが、マイトファジーの誘導・阻害が不明確であった。そこでMtphagy DyeとLyso Dyeを用い酸性状態のミトコンドリアとリソソームの共局在をみることでより直接的に評価できた。またポジティブコントロールとしてCCCP 50uM、低酸素状態によりマイトファジーが誘導されていることが再現性をもって示すことができた。 以上より現時点での進捗状況としてはやや遅れていると言える。その理由としてはマイトファジーが誘導・阻害されていることがはっきりと評価できず、コロニー形成法を行いながら条件を時間をかけて探索し結果を出すことができなかった。しかし、マイトファジーの評価手法とそれを誘導する手法が確立することができた。そのため、次年度はこれらをもとにより効率的に研究を進めることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)マイトファジーと放射線増感効果との関連につき検証する 今回コロニー形成法にて放射線増感効果が示唆されたのはマイトファジーの誘導剤であるCCCPであった。そこでその他の手法によりマイトファジーを誘導させることで放射線増感効果が得られることを確認する。またマイトファジーの阻害剤を併用することで、CCCPにより誘導されていたマイトファジーを阻害出来ていることをMtphagy DyeとLyso Dye染色により確認し、それにより放射線増感効果が減弱することをコロニー形成法にて確認する。これらからマイトファジーの誘導が放射線増感効果の機序となっている事を検証する。 2)実験動物を用いた放射線増感効果 in vitro でマイトファジーの誘導による放射線増感効果を明らかにできれば、CCCPは毒性が強く臨床利用は難しいためその他の薬剤を用いて、実験動物での放射線増感効果を検証する。膵癌細胞をヌードマウス大腿皮下に移植し腫瘍を形成させる。放射線照射、マイトファジーの誘導剤投与、照射とマイトファジーの誘導剤投与を行い、腫瘍増殖率を測定する。さらに固定凍結切片を作成し、in vivo におけるマイトファジーの誘導を検鏡にて評価する。
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Causes of Carryover |
当初、今年度予定していたマイトファジーの誘導・阻害によるミトコンドリアの量の変化を評価するためのミトコンドリアDNA量の測定による定量化、ミトコンドリア由来の活性酸素種の増加を評価するためMitoSOX染色を行うことができたかった。そのため上記検討で予定していた消耗品(実験試薬等)については購入に至らず次年度に使用する予定である。さらに一部の試薬、消耗品実験器具については研究室内で効率的に購入が可能であり、合わせて次年度有効に利用する計画である。
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