2020 Fiscal Year Research-status Report
標的アイソトープ治療のための核種精密イメージング技術の開発
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20K16777
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
草野 広樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高度被ばく医療センター 計測・線量評価部, 研究員(任常) (10547615)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 標的アイソトープ治療 / X線 / イメージング / 位置敏感型検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルファ線を利用した標的アイソトープ治療は、転移性の悪性腫瘍に対して効果の高い全身治療法として期待されており、At-211は標的アイソトープ治療に用いるアルファ線放出核種の有力な候補である。本研究は、At-211を用いた標的アイソトープ治療に向けて、薬剤開発や治療計画最適化に必要不可欠な、放射性薬剤の生体内分布を可視化するためのイメージング技術の開発を目的とする。生体外部から詳細かつ定量的にAt-211の分布を取得するために、At-211の崩壊に伴い放出されるPo K-X線に最適化したイメージング装置の設計、試作、および検証を行う。 2020年度は、イメージング装置の設計、X線検出器部の試作と検出器固有性能(固有空間分解能、エネルギー分解能、およびそれらの位置依存性)の評価を実施した。検出器は、実現可能な位置分解能と応答の一様性、および特性X線の検出効率を考慮し、モノリシック型のNaI(Tl)シンチレータ(50 mm×50 mm×3 mm)とした。設計最適化検討の結果、タングステンコリメータ(直径0.7 mm)により、距離15 mmの計測対象に対して、検出感度約60 cps/MBq、空間分解能約1.5 mmを実現できる見込みを得た。また、NaI(Tl)シンチレータと位置敏感型PMT、および抵抗分割によるSCD(Symmetric charge division)方式の読み出し回路を用いてX線検出器を試作し、検出器固有性能の評価を行った。結果、視野中心部では、122 keVのガンマ線に対して検出器固有分解能約1.4 mm、エネルギー分解能約9.3%が得られ、イメージング装置として十分な性能が得られることを確認した。読み出し信号数の削減により、取り扱いが簡便で低コストな装置の実現につながることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小動物実験研究への応用等において、より容易な取り扱いを可能とするため、小型軽量、低電圧動作、振動や磁場に強い、といった特徴を持つSiPMアレイを用いたX線検出器を試作し、性能評価を行うことを予定していた。しかし、SiPMアレイの信号処理回路の整備に見込みよりも時間を要していること、およびCOVID-19の影響で出勤が制限されたことにより、予定していた実験を完了できなかったため、研究計画に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
SiPMアレイを用いたX線検出器の性能評価を実施する。電荷分割回路による信号読み出しおよび位置再構成方法の比較検討により、十分な検出器性能かつ少ない信号数による簡便な信号読み出しを確立する。また、エネルギー分解能改善のため、LaBr3(Ce)シンチレータを用いたX線検出器の性能評価を実施する。さらに、コリメータを用いたイメージング装置を試作し、ガンマ線源、およびAt-211に対するイメージング性能の評価を実施し、At-211の分布および強度を定量できることを検証する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主に、LaBr3(Ce)シンチレータの見積もりを精査したことで金額が変動したことによる。次年度は、主にSiPMアレイの信号処理回路の整備、イメージング装置試作機の製作費を中心に使用する計画である。
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