2021 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による心毒性の克服に向けた病態解析と細胞骨格を標的とした新規治療法の検討
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20K16801
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (60464913)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線心毒性 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸部悪性腫瘍に対する放射線照射後の心毒性が臨床上大きな問題となっている。一方で心毒性発症のメカニズムは不明な点が多く、予防法や根本的治療法は確立していない。そこで放射線誘発性心毒性の克服に向けて、放射線誘発性心毒性のマウスモデルの確立とマウスモデルの心臓の形態学的、病理学的変化を検討した。 BALB/c マウスにΦ15mmの照射範囲で心臓に前1門12 Gy、もしくは左右2門20 Gyの単回照射を行い、その後の形態学的経時変化をμCTで経過観察を行った。照射後12週、16週に心臓を摘出し病理学的に心臓への放射線の影響を評価した。12 Gy照射後16週のマウス心臓は右室周囲の心外膜が肥厚し線維化していた。心外膜には血管新生と細胞浸潤が認められた。その細胞の一部はα-SMA陽性の筋線維芽細胞であり、周囲にコラーゲンの沈着を認めた。20 Gy照射後12週のμCTで有意に右房の拡大が認められ、右心不全が示唆された。 Rhoキナーゼ阻害薬であるファスジルはくも膜下出血後の脳血管攣縮予防薬として承認されている薬剤であり、加えて抗線維化効果が報告されている。そこでファスジル投与により心臓照射後の大動脈弁の肥厚および線維化が改善されるかを検討した。ファスジルは照射後12週から25mg/kgで隔日に腹腔注で投与した。照射後20週から24週に心臓を摘出し評価したところ20 Gy照射後24週のマウス大動脈弁の肥厚はファスジル投与により改善を認めた。CTでは右房の拡大所見の改善が認められた。照射後の肥厚部位に認められる弁膜のα-SMA陽性筋線維芽細胞がファスジル投与により減少していた。 心臓への放射線照射により引き起こされる大動脈弁の肥厚、線維化はファスジル投与により改善された。
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