2020 Fiscal Year Research-status Report
光超音波による腫瘍低酸素領域の可視化と腫瘍及び新生血管同時イメージング法の開発
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20K16822
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 純明 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80760769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光超音波 / EPR効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの光超音波イメージング研究では、血中ヘモグロビンを光吸収体として非侵襲的に人体の正常組織や腫瘍内の微細血管像が得られることを報告してきた。 本研究ではマウスモデルを用いて腫瘍新生血管を描出するとともに、腫瘍に特異的な抗体を投与することで腫瘍そのものの描出を同時に行い、さらには、低酸素応答性の酵素に対する抗体を用いることで腫瘍の悪性化に関与しているとされる低酸素領域の可視化を行うことを目的としている。 本研究の実施計画は、i) 光超音波による腫瘍のイメージング、ii) 光超音波による腫瘍低酸素領域の可視化、iii) Validation の3段階からなる。 本年度は段階i)のうち、腫瘍特異的な抗体を用いず、ICGのEPR効果のみで光超音波によって腫瘍の選択的な描出が可能かについての再検討および調査を臨床面から行なった(in vivoでの検討は本研究課題開始前に探索的に行い、さまざまな投与量や投与後経過時間でもICG単独では腫瘍の選択的描出が難しいという結果を得ていた)。具体的には実臨床で用いられるICGの使用法において、癌種によってタイミング、投与量などが異なることが判明した。ICGに対するEPR効果が低い腫瘍(腫瘍血管)の場合、想定していた通り、腫瘍特異的抗体にICGを付加するといった工夫が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の第1段階である、光超音波による腫瘍のイメージングを達成するため、ICGによるEPR効果単独でもある程度は選択的な腫瘍の描出が可能ではないかという予想を立てていたが、これについては事前検討での結果からさらなる検討を要すると判断した。条件設定をさらに細かく設定することや、腫瘍の生育段階ごとに投与撮像実験を行い比較する必要性はもとより、さらには実臨床での使用例を参考にフィードバックするなどの段階が追加で必要と考え、当初の計画に第0段階を挿入することとした。以上により、当初の計画よりやや遅れているが、研究計画全体には良い影響を与えるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ICG単独による腫瘍イメージングについては、条件設定をさらに細かく設定し、腫瘍の生育段階ごとに投与撮像実験を行い、さらには精度の高いサブトラクションなどの画像処理を行なって検討していく予定である。また、同時に臨床応用されている癌種ごとのICG薬物動態などの情報収集をさらに徹底し、条件設定の最適化にフィードバックする。
今後は本年度の上記結果を踏まえて、ICG単独での限界も考慮し、腫瘍特異的抗体とICGの組み合わせによる腫瘍の選択的描出能の向上について検討するため、早々にCEA抗体などの選定に入る。これはICG単独による描出の成否如何を問わず予定されていたものである。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍により新規の実験開始が制限され、これまでの当研究室で集積した本研究課題に関与する免疫染色データのレビューなどを中心に開始した。 また、あらかじめ得られていたヒトの光超音波画像の解析業務並びに、実臨床でのICGの応用例からin vivo実験で確認すべき事象を整理するなどの情報収集を中心に行ったため、支出なく、本研究課題の第1段階の前段階にあたる予備研究を遂行した。本結果から次年度はICG付加抗体の使用が当初の計画よりも増えることが想定され、発生した次年度使用額はこれに当てる予定である。
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