2020 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析を基軸として多分化能からアプローチする放射線感受性の要因解析
Project/Area Number |
20K16832
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
石川 純也 杏林大学, 保健学部, 助教 (70707215)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 造血幹/前駆細胞 / プロテオーム / 酸化損傷タンパク質 / 放射線感受性 / 分化・増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線ばく露に伴う生物学的応答の重要な指標は細胞死であり、その標的は遺伝物質DNAである。生涯に渡り全ての末梢血球を供給する造血幹/前駆細胞は放射線に高い感受性を示すが、細胞死より低い線量で分化・増殖能を喪失する。これには、一般的な放射線誘発細胞死とは異なる作用機序が考えられる。即ち、放射線損傷からの細胞回復のボトルネックは情報(DNA)ではなく機能(プロテオーム)であるのかもしれない.そこで本研究では、放射線感受性である造血幹/前駆細胞の多分化能を評価指標に、放射線誘発タンパク質損傷が多分化能や細胞死にどのように関与するのか検討し、線量応答と感受性の機序解明に繋げることを目的とする。本研究の成果は、造血機能の個体差感受性の評価に有用であると共に、被ばく医療や放射線治療の個別化へ応用発展が期待される。 令和2年度は、ヒトCD34+細胞へ0~2 GyのX線照射後3時間、6時間、12時間、24時間における(1)生存細胞数、(2)クローン増殖能、(3)酸化損傷タンパク質、(4)DNA損傷頻度の変化について調査した。その結果、照射後12時間以内にクローン増殖能が大きく減少し、酸化損傷タンパク質やDNA損傷頻度に変化がみられることが明らかになった。これらの結果は、放射線に分化・増殖能の喪失にタンパク質の酸化損傷が関与している可能性を示している。そこで令和3年度は分化・増殖能とタンパク質損傷との関連性解析を継続するとともに、酸化損傷タンパク質の除去機能との関連性についても明らかする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に実施を計画していた項目のうち、基盤となる照射後24時間以内のクローン増殖能と酸化損傷タンパク質との関連性、さらにDNA損傷頻度解析により、クローン増殖能喪失には酸化損傷タンパク質が関与している可能性を明らかにした。これらの検証は現在も進めており、これらの結果がでる令和3年度は研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年度の検討課題1「分化・増殖能、タンパク質損傷量と線量応答との関連性解析」、特に酸化損傷タンパク質と線量応答に関して継続して研究を推進すると共に、検討課題2「酸化損傷タンパク質除去機能との関連性解析」の推進を加速、さらに検討課題3「放射線感受性の要因解析と検証」を開始する。 令和3年度に検討する具体的な項目は次の3点である。 (1)酸化損傷タンパク質の線量・時間変化の解析 (2)酸化損傷タンパク質除去機能の解析 (3)酸化損傷タンパク質及び遺伝子発現変化の網羅的解析
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Causes of Carryover |
令和2年度使用額で概ね目標とする成果が得られたため。
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