2020 Fiscal Year Research-status Report
気管切開児における下気道細菌感染症の臨床的・血液学的特徴の解明
Project/Area Number |
20K16856
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南川 将吾 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10772634)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 気管切開 / 下気道細菌感染 / 小児 / multiplex real-time PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
気管切開術を施行された児(気切児)は、重篤な基礎疾患のため頻繁に下気道感染症に罹患する。しかし、気切児は自覚症状の聴取や身体所見異常の発見が難しく、既存の血液バイオマーカーの有用性は不明であり、気道内における常在菌繁殖のため喀痰培養検査でさえも信憑性が高くない。その結果、細菌感染症の診断は非常に困難となり、下気道感染症状を有する気切児においては広域抗菌薬が盲目的に多用される。近年、multiplex real-time PCR panel(以下パネル)を用いた遺伝学的検査による感染症の病原特定の有用性が注目されている。パネルは非常に高感度で病原体を検出可能であり、その精度の高さも評価されている。そこで本研究は下気道感染症状を呈する気切児に対して、1)パネル検査により細菌感染群と非細菌感染群に分類し、2)両群における臨床症状・新規バイオマーカーを含む血液マーカー・喀痰培養結果について比較検討することで、気切児における下気道細菌感染症の特徴を明らかにし、有用なバイオマーカーの探索を行うことを目的とする。本研究は最新の技術を用いることにより、気切児における下気道細菌感染症の適切な診断および抗菌薬の適正使用を可能とする、気切児の診療において頻繁に遭遇する重要な問題点をテーマとした研究である。 研究開始となった2020年度は新型コロナウィルスの影響により、病院環境の変化や研究計画の変更を余儀なくされており、進捗に大きな遅れを生じているが、2021年度より計画の遂行が可能となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度は新型コロナウィルスの影響が大きく、気管切開児の検査の核になる気道分泌物検査をとる事や入院管理についても色々な変更や制約を余儀なくされた。また、予定していたmultiplex real-time PCR検査においては新型コロナウィルスが対象疾患として組み込まれていなかったため、検査キットの変更を含めた研究計画の立て直しも必要となった点や、研究責任者の環境も大きく変化したことも影響した。 それらの修正を経て、今年度より症例の集積から開始している。細菌感染症群と非細菌感染症群の分類にはコロナウィルスを含むパネルキットを用いることとし、パネルキット用の検査機器も導入している。また、キットの変更により検索できる病原菌の種類が減少したため、群間分類には臨床的判断も含めることとしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は症例集積をまず推進していく。上記影響にて症歴集積開始が遅れており、症例数の早急な蓄積が必要となる。そこで、当初予定していた入院症例は、当科における入院症例だけではなく、他科入院の症例についても協力していただき、症例集積数を増加させる。当科以外の入院症例でも少数であるが気管切開児の入院症例がいるため症例数増加が期待できる。また、院内にパネルキット検査機器が導入されたことにより、パネル検査が院内で迅速に施行できるようになったことで、研究遂行がスムーズとなった。また、血液マーカー検索のための提携先である神戸大学研究室についても、前年度は一部出入り制限となっていたが今年度は解除されており、こちらも研究遂行には支障を来さない。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響による研究進捗の遅れから症例数が減少しており、研究遂行に必要な物品購入数が当初予定より減少している。
|