2020 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノム解析による免疫グロブリン療法抵抗性川崎病の機序解明
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20K16871
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
高瀬 隆太 久留米大学, 医学部, 助教 (40624466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 川崎病 / 好中球 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
川崎病が1967年に小児科医の川崎富作により報告されてから51年が経過しているが、未だにその病因は明らかとなっていない。無治療では約25%に冠動脈瘤を生じ、現在では先進国における後天性心疾患最大の原因であり、川崎病血管炎のメカニズム解明は患者の生命予後に直結する重要な課題である。また、川崎病の標準的治療として、免疫グロブリン療法(IVIG)が確立し、後遺症を残す頻度が激減したとはいえ、約20%程度認めるIVIGに反応しない治療抵抗性の症例が存在し、実際に臨床において、その診断と追加治療について苦慮することも多い。また、IVIGに不応であることが冠動脈瘤形成のリスク因子であり、治療感受性の予測因子確立は、病因解明と合わせて重要な課題である。 川崎はその初めての報告の中で、血算の特徴として白血球数の増多、核の左方移動、リンパ球、好酸球の減少、単球は正常かむしろ増多するとまとめている。これまでにも、川崎病患者のゲノムや単球を用いた分子生物学的研究は精力的になされてきたが、その全容解明には至らず、重要な因子の1つである好中球に焦点をあてた報告は見逃されてきた。本研究においては、急性期と治療前後での好中球を含む血球細胞を対象に川崎病の病因究明と新規の診断、および治療感受性マーカーを明らかにすることを目的としている。このため、まず、安定して好中球を分離する実験系の確立が必要であり、小児においてできるだけ少ない検体量でも安定して好中球が分離できる実験系を確立した。次に、本研究においては川崎病の急性期という極めて炎症が強い病態での実験となるため、実際に十分な説明と同意を得た患者検体を用いて今回の実験系に問題がないことを確認した。今後、同意を得られた対象となる患者検体が揃い次第、網羅的遺伝子発現解析によるプロファイルの比較を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画としては、①好中球分離の安定した実験系確立すること。②好中球とPBMCの形態比較、遺伝子発現プロファイルの比較、③エピゲノム解析等とプロテオーム(Proteome)等の様々な網羅的な分子情報をまとめ、川崎病の病態および疾患感受性、治療感受性を明らかにする予定である。川崎病という極めて炎症が強い病態においてこれまでに報告されているような好中球分離の実験系が十分に有用であるかを検討できた。また、次年度に想定していた研究計画である、遺伝子発現解析、詳細なゲノム情報解析手法を確立するという点に関しても、先んじて理論的枠組み、情報処理システムの構築を進めており、エントリー可能な患者の同意をもって次年度の早い時期には実施できること期待される。このような観点から、進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、前年度に確立した実験系を用いて、患者検体から得られる遺伝子発現解析、形態評価を実施する予定である。今後の計画においては、発現解析においても安定した解析ができるかという点が課題である。先行研究においても好中球は分化を遂げた細胞であり、生存期間は短く、遺伝子発現レベルは低く不安定であることが報告されている。 まず非常に簡素なやり方でマーカーとなりうる遺伝子発現解析を行い、安定した結果が得られるかを十分に評価した後に、網羅的遺伝子解析によるプロファイル比較を行うことを検討している。また、発現レベルにおいて安定した結果が得られるようであればプロテオーム等の分子情報を組み合わせたオミックス解析を行い、川崎病の病態に迫る予定である。これらの結果をまとめた上で学術雑誌に投稿および国内外での学会において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた症例数よりも少ないため、次年度以降に症例をまってから研究をすすめる予定である
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