2022 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症の病態におけるインスリン分泌促進ホルモン、その分解酵素の役割は?
Project/Area Number |
20K16885
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
細川 奨 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座講師 (00737025)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / DPP-4阻害薬 / caveolin-1 / GLP-1受容体作動薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インスリン分泌促進ホルモンであるGLP-1、およびその分解酵素DPP-4が、肺高血圧症の病態に果たす役割を検討し、これらの薬剤の肺高血圧症への治療薬としての可能性を探るものである。 2020年度はin vivoでのデータを中心に検討した。モノクロタリン誘発肺高血圧ラットを用いて、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬が肺高血圧症を改善すること、特にこれら2剤の併用が最も生存率が高めることを確認した。 続いて研究実施計画に基づき、2021年度は以下の検討を行った。(1)T細胞と肺動脈平滑筋細胞の直接の相互作用の可能性の検討:Flagタグ付きDPP-4プラスミド、およびDPP-4変異プラスミドを作成し、これをHEK293細胞に遺伝子導入、ライセートを作成したのち、肺動脈平滑筋細胞と免疫沈降を行った。この結果、DPP-4と直接作用するのは、肺動脈平滑筋細胞上のcaveolin-1であることが明らかになった。このことから、肺動脈平滑筋細胞の増殖に、CD26・caveolin-1系の相互作用が関与しているという仮説を立て、以下の実験を行なった。(2)T細胞と肺動脈平滑筋細胞の共培養:FGF2で刺激した肺動脈平滑筋細胞とJurkat-CD26細胞株を共培養したところ、Jurkat-parent株との共培養に比べ強い細胞増殖を示す傾向を認めた。 2022年度は、実験の進捗状況を考慮し、DPP-4阻害薬を用いて以下の検討を行った。(1)免疫組織化学染色:ラット(コントロール群、モノクロタリン誘発肺高血圧群、モノクロタリン+DPP-4阻害薬群)の3群を用いて、NF-kB リン酸化p65を比較したところ、モノクロタリン群で優位に肺動脈平滑筋細胞に一致したリン酸化p65の発現増強を認めた。(2)タンパク発現:ヒト肺動脈平滑筋細胞を用いて、TGF-βあるいはFGF2で刺激し、DPP-4阻害薬を投与したところ、リン酸化p65のタンパク発現量はDPP-4阻害薬の濃度依存性に抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本実験計画に対して、可能と考えられたエフォートを十分に割けていないことが進捗が遅れた主な要因である。 また実験の条件検討も予想以上に時間を要した(例:DPP-4のT細胞活性化抗原としての役割を検討する実験)。本実験計画では、肺動脈平滑筋細胞における(1)DPP-4受容体の存在の検討、(2)GLP-1の肺動脈平滑筋細胞への作用機序についても検討課題であったが、実験の進捗状況を鑑みて今後は(2)を中心に検討をする。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況が大幅に遅れておりDPP-4の役割を中心に検討してまとめる方向とする。現時点でDPP-4阻害薬が蛋白分解酵素の役割としてNF-kBp65の核内移行抑制により、結果として肺動脈平滑筋細胞の増殖抑制作用を有することを明らかにしている。また非蛋白分解酵素の役割として、caveolion1と直接作用することが明らかとなった。これらが結果としてモノクロタリン誘発肺高血圧ラットの肺高血圧症を軽減した要因と考える。 加えて、GLP-1受容体作動薬を用いた肺動脈平滑筋細胞の増殖抑制作用も示しており、その機序を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進捗が遅れているため、2022年度の予算を使用しきれず、次年度使用額が生じた。残りの金額は、さらなる研究計画の遂行に使用する予定である。
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