2020 Fiscal Year Research-status Report
低フォスファターゼ症の新規治療戦略確立に向けた包括的骨形成メカニズムの解明
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20K16894
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
梶谷 尚世 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (00513087)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低フォスファターゼ症 / アルカリフォスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
低フォスファターゼ症(HPP)は、アルカリフォスファターゼ(ALP)をコードするALPL遺伝子異常による先天性骨形成不全症である。これに対し、現在では人工アルカリフォスファターゼを投与する酵素補充療法が行われているが、長期的な投与により中和抗体が産生されてしまうことなどの理由からより効果的な治療法の開発が望まれる。そのためには、未だ理解が不十分なALPの生物学的役割を明らかにする必要がある。 本研究では、低フォスファターゼ症の病態解明を目指し、ALPの細胞内機能に焦点をあて研究を行っている。本年度は、当初の研究計画に沿い、ALPが相互作用するタンパク質を同定することを試みた。ただし、これには必要な解析機器が本学には設置されていないことから、当該機器と専門的技術を有する東北大学加齢医学研究所に依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ALPは膜貫通ドメインを持っており、それによって細胞膜に局在し細胞外の無機ピロリン酸から無機リン酸の産生を担っていることが知られている。本年度の達成目標であるALPの相互作用タンパク質を同定するにあたり、まずALPを高発現するヒト骨肉腫細胞株を用いてALPの細胞内局在を調べたところ、ALPは細胞膜だけでなくミトコンドリアにも存在していることがわかった。しかしながら、東北大学加齢医学研究所に依頼中のALPと相互作用するタンパク質については、現在でも同定には至っておらず、実験条件の再検討が必要と考えられる。 尚、現在、研究代表者は2020年10月中旬より産前・産後休暇、および育児休暇を取得中であるため、本研究遂行を一時的に中断している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアは細胞内のエネルギー源であるATP産生を担う重要な細胞小器官である。また、近年の研究報告から、ミトコンドリアでのTCAサイクルの駆動が細胞分化にも重要な役割を持っていることが知られている。これらのことから、ミトコンドリアに局在するALPは、細胞の増殖や分化制御にも関与していることが予想される。したがって、今後の研究方針としてALPL遺伝子をノックアウトしたヒト骨肉腫細胞株を作製し、ミトコンドリアにおけるALPの欠損が細胞の増殖、および分化への関与を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者は2020年10月中旬より現在に至るまで、産前・産後休暇および育児休暇により一時的に本研究を中断している。 また、今後の助成金の使用については、復帰を予定している7月より研究活動を再開し、当該研究遂行に必要な物品購入のための費用として充てる。
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