2021 Fiscal Year Research-status Report
低フォスファターゼ症の新規治療戦略確立に向けた包括的骨形成メカニズムの解明
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20K16894
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
梶谷 尚世 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (00513087)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 低フォスファターゼ症 / ALPL / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
低フォスファターゼ症(HPP)は、組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNALP)としても知られているALPL遺伝子の異常による先天性骨形成不全症である。これに対し、現在では人工的に合成されたアルカリフォスファターゼ(薬品名 ストレンジック)を投与する酵素補充療法が行われているが、長期的な投与により中和抗体が産生されてしまうことなどの理由からより効果的な治療法の開発が望まれる。そのためには、未だ理解が不十分なALPの生物学的役割を明らかにする必要がある。そこで本研究では、次の点に焦点を当て研究を行っている。 ①TNALPの相互作用タンパク質の同定 ②当該基質が関与するシグナル経路と骨形成不全との関係性 項目①については、研究計画当初の予想よりも困難であり、未だTNALPの新たな相互作用タンパク質の同定には至っていない。その一方で、TNALPはよく知られた細胞膜表面だけでなく細胞内部にも存在しているらしいことがわかった。そこで本年度の研究は、TNALPの細胞内局在の観点から解析を進めることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究結果から、TNALPは細胞膜だけでなくミトコンドリアにも局在していることがわかった。しかし、東北大学加齢研との共同研究によるTNALPの相互作用タンパク質の同定は未だ成果が得られていない状況である。そこで本年度は、まずミトコンドリアに局在するTNALPについて解析を行った。現在、NCBIのデータベースには、3つのアミノ酸配列の異なるヒトALPL遺伝子のmRNA配列が登録されている。その内1つはすでに知られている細胞膜上に局在するTNALPをコードするものであることから、残り2つのどちらかがミトコンドリアに局在するTNALPをコードしていると予想された。そこで、各TNALPアイソフォームとEGFPとの融合遺伝子の発現コンストラクトを作製し、ヒト骨肉腫細胞株に遺伝子導入を行い、ミトコンドリア局在型TNALPを同定した。また、当該アイソフォームの機能解析を行うため、ALPL遺伝子をノックアウトしたヒト骨肉腫細胞株を樹立した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在成果の得られていないTNALPの相互作用タンパクの同定は、本研究課題のキーポイントであり、本研究成果に大きな一歩をもたらすと期待される。そこで、今回作製したミトコンドリア局在型TNALPとEGFPとの融合遺伝子の発現コンストラクトを用いて同実験を東北大学加齢研に依頼した。これによって、免疫沈降のエピトープとしてEGFPが使用可能となるため、相互作用タンパク質があればよりクリアな結果が得られると期待される。また、今回作製したALPLノックアウト細胞株の表現型を野生型細胞株と比較し、ミトコンドリア局在型TNALPとミトコンドリアの機能との関係について解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、2020年10月中旬より2021年6月まで産前・産後休暇、および育児休暇を取得しており、一時的に研究活動を中断していたため。
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