2021 Fiscal Year Research-status Report
Rett症候群に対するMECP2発現調節等を介した遺伝子治療法開発
Project/Area Number |
20K16901
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
宮内 彰彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (50570397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / Rett症候群 / MECP2重複症候群 / micro RNA / アデノ随伴ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、MECP2関連疾患であるRett症候群の遺伝子治療開発を目的としている。Rett症候群は女児に発症しMECP2の変異により生じるが、MECP2重複の男児でも重度知的障害、難治性てんかんを発症するため、発現遺伝子量の調節が治療で重要となる。さらに、MECP2はX染色体上に存在するため細胞単位のランダムな不活化を受けており、正常なMECP2蛋白質を発現する細胞と発現の無い細胞が混在する。このX染色体の不活性化現象も分子病態の理解を複雑にしており、治療に際しては最適なベクターの作成や、導入(外来)MECP2遺伝子の発現量の制御、及び内在するが不活化しているMECP2の発現調節等の方法の開発が重要となる。 初年度にはまずRett症候群に対する遺伝子治療用のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの作成を行った。遺伝子治療用ベクターは、神経細胞移行に優れ、中枢神経の広範囲の領域に遺伝子導入可能なAAV.GTXベクターを選択し、プロモーターは遺伝子発現効率の低さから過剰発現のリスクの軽減が期待できるSynIプロモーターを選択し、この低発現プロモーター及びMECP2遺伝子を導入したAAVベクターを作成し、実験必要量を得た。本年度は、Rett症候群のモデル動物であるMecp2欠損マウスのヘテロ雌及びヘミ雄の繁殖を開始し、産出個体数が揃えられたため、遺伝子治療用ベクターを投与した。運動障害等の評価の改善、組織や神経細胞の変化を観察に着手している。また、MECP2発現量の抑制コントロール法の検討として、MECP2関連疾患のMECP2重複症候群で、miRNAや遺伝子編集技術を応用したdCAS9などによりMECP2の発現を抑制する方法について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は遺伝子治療用ベクターをRett症候群のモデル動物であるMecp2欠損マウスに投与する段階に進み、Mecp2欠損マウスではメスではヘテロ型だけではなくオスのヘミ型すなわち欠損のみを持つ個体に対しても遺伝子治療用ベクターを投与し、生存期間や行動実験による評価を行っている。In vitroでは、AAVベクター作成後に培養細胞に導入し、内在および導入(外来)MECP2発現量のモニタリングができることを初年度に明らかにした。本年度はRett症候群患者に由来するiPS細胞の神経細胞分化にも着手し、作成したAAVベクターをヒトiPS細胞から分化させた神経細胞・マウス初代神経細胞へ感染させ、外来性および内在性MECP2発現量のモニタリングによる評価系を構築してきており、概ね順調に実施ができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、遺伝子治療用AAVベクター投与後のMecp2欠損マウスでの生存期間やロータロッド試験、オープンフィールド試験、スリーチャンバー試験などの運動障害等の評価として改善、組織や神経細胞の変化の解析を進める。また、Mecp2重複症候群のモデル動物であるMecp2重複マウスについても繁殖を開始しており、産出個体数が揃い次第、投与を実施する見込みである。今後、患者iPS細胞由来の神経細胞の変化やX 染色体不活性化因子等がMECP2に与える影響についても検討していくとともに、核酸医薬(miRNA mimic、SiRNA、アンチセンスオリゴ等)や遺伝子編集技術を応用したdCAS9の融合による複合的な方法により、正常遺伝子の発現レベルの制御可能なAAVベクターの構築すべく、設計の工程を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス流行状況のため、昨年度に引き続き、海外での学会発表や情報収集を行うことができず、旅費その他の支出がなかった。今後の開催に備え、結果報告の準備を行い、学会の参加費や旅費その他の支出としての使用を検討している。
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