2022 Fiscal Year Research-status Report
脳組織酸素代謝を指標とした新しい早産児管理法の確立
Project/Area Number |
20K16907
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
奈良 昇乃助 東京医科大学, 医学部, 助教 (70459569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近赤外線分光装置 / 脳組織酸素飽和度 / 組織酸素代謝指標 / NIRS / 早産児 / 未熟児動脈管開存症 / 頭蓋内出血 / 晩期循環不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織酸素代謝指標は、任意の組織における酸素代謝状態を評価できる点で有益であるが、管理目標値が明らかでないことが臨床現場で運用する上での障壁となっている。本研究は、早産児の脳組織酸素代謝指標の経時的に測定し、予後との関連について検討することで未熟児診療における脳組織酸素代謝指標の管理目標値を見出すことを目的としている。 2022年度は研究期間中に検査機器の故障があったことに加え、当院の早産児出生数の減少が重なり、計画当初に予定していた必要サンプル数に届かず、引き続きデータ収集をおこなっている。在胎30週未満または出生体重1500g未満の早産児を対象に近赤外分光装置(TRS-20 浜松ホトニクス社)を用いて脳組織酸素代謝指標を計測した。急性期は生後12、24、48、72時間で計測をおこない、以降は修正37週を迎えるまで週1回のペースで測定を続けた。 中間報告として、脳組織酸素飽和度(ScO2)と修正18か月予後との関連について統計学的検討をおこない、国内学術集会にて報告した。入院経過中に一度でもScO2が60%を下回ったものをScO2低値群、下回らなかったものをScO2正常群として2群に分けて比較したところ、ScO2低値群はScO2正常群に比べて、修正18か月時の運動性DQ、認知性DQ、全DQが有意に低値であった。この結果から早産児におけるScO2の低下が長期的な神経学的予後不良に寄与する可能性が示唆され、早産児の神経学的予後改善に寄与する有益な成果が得られる可能性が高いと考えている。 2023年度は研究成果の国際学術集会での発表と論文化による公表をおこないたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
検査機器に故障が生じ、一定期間データ収集ができなかったことに加え、当院の早産児出生数の減少の時期が重なったことでデータ収集に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたサンプル数には届いていないため、データ収集を進める一方で、すでに集まったデータを解析し、研究成果の論文化を主体に研究を推進する。 具体的には、早産児の脳組織酸素代謝指標の推移と修正18か月予後との関連の報告、未熟児動脈管開存症における上下肢の組織酸素飽和度比との関連、晩期循環不全発症時の脳組織酸素飽和度の推移の報告などである。
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Causes of Carryover |
検査機器本体の故障に加え、当院での早産児出生数の減少が重なったことで動脈管開存症、晩期循環不全、慢性肺疾患などの早産児合併症を呈した症例件数も例年と比較して少数となり、組織酸素代謝指標の連続測定に用いる使い捨てオプトードの消費量が当初の予定よりも少なく、未使用金を繰り越した。また、関連学術集会がオンライン開催や近隣開催となり、旅費の歳出も少なかったことも理由として挙げられる。 2023年度は国際学術集会への参加費用や論文校正費用を中心に研究費を使用する。
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