2020 Fiscal Year Research-status Report
リンパ管腫症モデルマウスによる発症メカニズムの解明と治療への応用
Project/Area Number |
20K16912
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野澤 明史 東北大学, 大学病院, 医員 (20772106)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リンパ管腫症 / NRAS |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ管腫症は原因不明の全身臓器にリンパ管組織が増殖する、極めて稀な難治性疾患である。近年、病変部位において、NRAS遺伝子の低頻度の体細胞変異(Q61R)が検出された。しかし、リンパ管腫症の病態を再現したモデルは報告されておらず、発症メカニズムは全く解明されていない。本研究では、リンパ管内皮細胞にNRAS遺伝子変異(Q61R)をモザイク状に発現したトランスジェニックマウスを作製することにより、リンパ管腫症の病態解明を行うとともに、新規治療薬の開発に繋げる。 令和2年度は、リンパ管腫症モデルマウス(リンパ管内皮細胞にNRAS遺伝子変異をモザイク状に発現したマウスモデル)の作製を進めた。まず、Mutant Mouse Resource and Research Centerからタモキシフェン投与によりメラノサイト特異的にNRAS Q61Rを発現するTyr-CRE-ERT2 LSL-NrasQ61Rマウスの凍結胚を購入し、胚移植により個体化した。それを野生型C57BL/6Jとかけ合わせ、Cre存在化にNRAS遺伝子変異(Q61R)を発現する LSL-NrasQ61Rマウスを作製した。現在は、作製したLSL-NrasQ61Rマウスと、Jackson Laboratoryから購入したタモキシフェン投与によりリンパ管内皮細胞特異的にCreを発現するProx1-Cre-ERT2マウスをかけ合わせ、タモキシフェン投与により、リンパ管内皮細胞特異的にNRASQ61Rがモザイク状に発現するリンパ管腫症モデルマウスを作製しているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ管腫症モデルマウス(リンパ管内皮細胞にNRAS遺伝子変異をモザイク状に発現したマウスモデル)の作製が順調に進んでいるため。Mutant Mouse Resource and Research Centerからタモキシフェン投与によりメラノサイト特異的にNRAS Q61Rを発現するTyr-CRE-ERT2 LSL-NrasQ61Rマウスの凍結胚を購入し、胚移植により個体化した。それを野生型C57BL/6Jとかけ合わせ、Cre存在化にNRAS遺伝子変異(Q61R)を発現する LSL-NrasQ61Rマウスを作製した。現在は、作製したLSL-NrasQ61Rマウスと、Jackson Laboratoryから購入したタモキシフェン投与によりリンパ管内皮細胞特異的にCreを発現するProx1-Cre-ERT2マウスをかけ合わせ、タモキシフェン投与により、リンパ管内皮細胞特異的にNRASQ61Rがモザイク状に発現するリンパ管腫症モデルを作製しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
リンパ管腫症モデルマウスが作製できたら、病変組織をリンパ管内皮細胞マーカーである、LYVE-1、Prox1、D2-40、CD31などを用いた免疫化学染色法で調べ、リンパ管腫症の病態について検討する。リンパ管腫症モデルマウスにおいて、病変の大きさ、胸水や腹水量などを評価し、リンパ管腫症の病態について検討する。リンパ管腫症モデルマウスの病変組織において、リンパ管内皮細胞の、PI3K/Akt/mTOR経路やRAS/MAPK経路に関係する遺伝子発現や蛋白発現(AKT, p-AKT, ERK, p-ERK, mTOR, RAS, MAPKなど)をリアルタイムPCRやウエスタンブロットで解析し、NRAS変異のない正常マウスと比較することで、リンパ管腫症の病態について検討する。リンパ管腫症モデルマウスにPI3K/Akt/mTOR経路やRAS/MAPK経路を標的とした阻害剤(PIK3CA阻害剤、MEK阻害剤、mTOR阻害剤など)を投与し、病変部に対する効果を、組織学的、機能的、細胞生物学的、分子生物学的に解析する。
|
Causes of Carryover |
リンパ管腫症モデルマウスの実験や解析に必要な費用が必要なため。マウスの実験に必要な費用(遺伝子組換えマウス系統の維持費、タモキシフェン投与に関連する試薬)、組織学的解析に必要な費用(組織の固定・切片の作成に必要な試薬、 抗体などの免疫染色に必要な試薬)、細胞生物学的分子生物学的な解析に必要な費用(Total RNA抽出・cDNA合成・Real-time PCRに必要な試薬、ウエスタンブロットに必要な試薬)。
|