2020 Fiscal Year Research-status Report
小児最未分化型急性骨髄性白血病の病態解析および特異的治療の基盤開発
Project/Area Number |
20K16923
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
才田 聡 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70638254)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 急性骨髄性白血病 / M0 / 遺伝子変異 / ゲノム / エピゲノム / 小児白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
最未分化型急性骨髄性白血病(AML-M0)は、小児の急性骨髄性白血病(AML)の中でも予後不良であることが報告されており、治療成績向上のための適切な治療法の開発が求められている。本研究では、小児AML-M0の患者検体を用いた種々のオミックス解析を行うことで、その遺伝学・生物学的プロファイルを明らかにし、小児AML-M0の原因となる遺伝学的異常、予後予測因子および新規治療標的の同定を目指す。 我々は自施設、協力施設、日本小児がん研究グループよりAML-M0の臨床検体25例を集積し、全エクソン解析および遺伝子発現解析を行った。得られたデータを既存の成人のデータと比較することで、小児におけるAML-M0の遺伝学的な特徴を明らかにすることができた。 遺伝子変異解析から、小児AML-M0と成人AML-M0の比較において、小児例ではFLT3, PTPN11およびJAK3の変異がより多かった。成人においては、RUNX1、IDH1、ASXL1変異を多く認めた。とくにRUNX1については、既報でも成人AML-M0に特徴的とされる変異であったが、今回我々の解析では小児例においては成人でみられるほどの頻度では指摘し得なった。 遺伝子発現解析では、融合遺伝子の有無について、小児では48%、成人で15%に白血病のドライバー変異と考えられる融合遺伝子を指摘し、その頻度については差があることが明らかとなった。このように同一疾患群においても、その発症の原因となる遺伝子変異のパターンに違いがあることは、発症年齢による病態や予後の違いが存在することを示している。今後これらの知見が、各年齢に応じた最適な治療の選択にも寄与することが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小児最未分化型急性骨髄性白血病(AML-M0)は、小児急性白血病の中でも極めて稀であるが、その予後は不良で、本疾患の病態を明らかにすることは、この予後不良の一群の治療成績を向上させる点において非常に重要である。我々は、多施設共同で本疾患群の検体収集に努め、小児AML-M0 25例の遺伝子変異解析と10例の遺伝子発現解析を行った。その結果、これまで明らかにされている成人のAML-M0における遺伝子変異のパターンと、小児AML-M0の遺伝子変異のパターンに違いがあることが明らかとなった。具体的には成人ではRUNX1、IDH1、ASXL1などの変異を有意に多く認めるが、小児においてはその傾向は明らかでなかった。また融合遺伝子については、小児例において多く認めるという結果であった。 以上のように、当初予定した解析は順調に進行しており、これまで明らかにされていなかった新規の知見も得られつつあるため、進捗はおおむね順調に経過していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで同様、引き続き検体の収集に努める。 現時点で、これまでに指摘されていない新規の遺伝子変異や融合遺伝子は指摘できていない。今後はさらに腫瘍細胞の詳細な遺伝子プロファイルを得るために、全ゲノムシーケンス解析を行う予定である。またmicroRNA(miRNA解析)解析およびメチレーション解析を行うことで、これまで明らかにされていなかった遺伝子発現に影響を与える因子について明らかにし、新規の白血病発症機序の解明につなげていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
【理由】次年度、分子生物学関連試薬の購入にあてるため。 【使用計画】分子生物学関連試薬の購入。
|